帯揚げは、昔は帯を固定するための帯紐や帯枕を隠す役割がメインでした。しかし、今では着物のコーディネートを楽しむための小物としての役割が大きいです。帯揚げの色や素材によって、着物全体の雰囲気も大きく変わります。そこで、ここでは着物を着るシーンやTPOに合わせた帯揚げの選び方について詳しく解説します。
目次
帯揚げとは
帯揚げは、おしゃれを楽しむ小物と思っている方が多いですが、元々どのような役割があったのでしょうか。ここでは帯揚げの歴史と役割、帯揚げに使われている素材の種類について、詳しく解説します。
帯揚げについて
帯揚げは、帯の上から着物とのつなぎ目の部分に巻く布のことで、帯を固定する紐を隠すために使います。昔の帯揚げは、帯の形を整えるために使っていましたが、お太鼓結びが一般的となってからは着物の装飾品の一部としての役割が大きくなりました。
振袖や訪問着など華やかな場面では、帯揚げをつけることで着物そのものがより一層、豪華になりますが、必ず着けなければいけないものではありません。半幅帯を使うようなカジュアルな着物や普段着の場合は、帯揚げを着けない方がシンプルで落ち着いた印象になります。
帯揚げの歴史
江戸末期、お太鼓結びが流行した頃から帯揚げを使う人が増えるようになりました。お太鼓結びに必要な帯枕を隠したり、形を整えたりするために帯揚げが発案されたと言われています。
最初は芸者の間でのみ使われていましたが、明治10年頃からお太鼓結びが一般大衆に流行しはじめたと同時に、帯揚げを使うのが一般的となっていきました。
帯揚げの素材
帯揚げは、帯や帯締めのように素材で格が上がったりすることはありません。着物を着るシーンによって素材を変えることで、着物全体の印象が変わります。
◆絞り
ふわふわと豪華な印象を与えます。成人式の振袖や未婚女性の礼装に使用されることが多いです。
◆綸子
光沢感のある、なめらかな素材です。冠婚葬祭のようなフォーマルな場面に合う、落ち着いた印象を与えます。
◆縮緬
シボの柔らかいふわっとした印象が華やかですが、光沢がほとんどないので落ち着いたシーンでもカジュアルな装いにも使用できます。シワになりにくいのも特徴です。
◆絽、紗
透け感が強く、透明感あふれる素材です。夏物の王道生地とも言われ、通気性に優れているため夏着物と合わせることが多いです。
帯揚げの選び方
帯揚げは着物に合わせて選ぶのが一般的ですが、他にも色々なパターンに合わせて選ぶことでコーディネートを楽しめます。ここでは、着物小物やシーンに合わせた帯揚げの選び方についてご紹介します。
着物や帯と同じ色を選ぶ
代表的な合わせ方で、初心者でも簡単にコーディネートができます。着物の柄の中から一色だけ拾って合わせたり、小物の色と合わせたりすると着物の雰囲気になじみます。
帯揚げと着物の色を同系色にすると、統一感があり品の良い印象を与えてくれます。着物が濃い色の場合は、帯揚げは少し薄めの同系色で合わせるとおしゃれになります。
着物や帯と違う色を選ぶ
着物全体の雰囲気が同系色でまとめられている場合、帯揚げや帯締めに補色を使用することで全体が締まった印象になります。
ふんわりと柔らかい印象から、華やかで豪華な印象に変えたい時は、帯揚げの色を濃いめにするといいでしょう。例えば赤の着物に補色の青緑や、反対色の青緑・青紫などを選ぶと個性的でモダンな雰囲気になります。オレンジなどのビビットカラーを使うと、若々しいフレッシュな印象を与えてくれます。
帯締めや半襟の色に合わせて選ぶ
着物の色や柄の色以外にも、帯締めや半襟の色とコーディネートするのもおすすめです。帯締めや半襟は着物全体のアクセントになる部分です。
帯揚げと上手く合わせることで、他の人とは違う個性的な印象にもなります。例えば、帯締めや半襟の色に補色や反対色を使用すると、大正ロマン風の装いになります。同色で合わせると、落ち着いたフォーマルな印象を与えてくれます。
シーンに合わせて選ぶ
帯揚げの色や素材は、着物を着る場面によって様々です。代表的な例を見ていきましょう。
帯揚げの色
◆白
礼装で使用することが多いです。礼装は白・銀・金しか使用できませんので、帯揚げも白が一般的です。
◆黒
無地は喪服で使用することが多いです。色柄が入っていたり、素材が柔らかいものであればカジュアルに使用することもあります。
◆色柄物
振袖や訪問着はもちろん、普段着などカジュアルな場面で主に使用します。
フォーマルの帯揚げ
フォーマルには正礼装と準礼装があります。正礼装では、黒留袖に合う白や黒の無地の帯揚げを合わせるのが基本です。白・金・銀以外の色は使用できませんので、少し華やかにしたい場合は、帯揚げの素材を絞りなどにするといいでしょう。 色留袖、色無地、訪問着のような準礼装には、淡い色の刺繍のものや絞りのものが華やかです。色が濃くなればなるほど、普段着用に近くなっていきます。振袖の場合はフォーマルでも特に華やかにする場合が多いので、総絞りの帯揚げなどを合わせることが多いです。
カジュアルの帯揚げ
訪問着や普段着のようなカジュアルな着物には、様々な柄や色の帯揚げを使用できます。
帯揚げの色柄と着物の組み合わせによって、着物姿の雰囲気はがらりと変わります。帯揚げと小物の組み合わせで、他とは違う自分だけの着物姿を作り出すこともできます。
カジュアルな中でも、特に濃いめの色や現代的な柄入りのものを合わせるとモダンな印象になります。鮮やかなビビットカラーの帯揚げに刺繍や絞りが入っていると、若々しい印象を与えてくれます。
夏向けの帯揚げ
夏は着物の色や素材も涼しげなものが多いので、帯揚げも爽やかな雰囲気のもので合わせるのがおすすめです。
絽・紗・麻のような透け感のある素材は、通気性もよく夏物の着物と合わせると、とても爽やかです。夏の素材の中でも「絽」はフォーマルでもカジュアルでも使用できますので、1枚持っておくといいでしょう。
夏素材は、だいたい6月から9月中旬くらいまで使用できます。
帯揚げの結び方
どんなに完璧に着物を着こなしていても、帯揚げが少し崩れているだけで全体的にだらしなく見えてしまいます。美しい着物姿を演出するためにも、帯揚げは綺麗に結びましょう。ここでは、2つの代表的な結び方をご紹介します。
本結び
帯揚げの基本の結び方です。帯の上から左右対称となるように、帯揚げを見せます。若い方はたっぷりと見せ、年配の方は少しだけ見せるのが一般的です。
1.左右の帯締めの長さを同じにします。
2.右手に持っている帯揚げを上にします。
3.下の帯揚げを輪っかにします。その時、帯と変更になるように折り曲げます。
4.2で持った帯揚げを、輪に通します。
5.帯締めの両端を帯と着物の間に入れて完成です。
一文字結び
帯揚げを横に伸ばして飾る結び方です。漢字の一のように見えるのため、このように呼ばれています。
1.帯揚げの左側を長めに回します。
2.短い方を三つ折りにして帯の上辺に乗せます。
3.左脇から帯の中に入れます。
4.もう片方も三つ折りにし、右脇から差し込み完成です。
まとめ
帯揚げは、着物全体の中でも特に目立つ部分にあるので、着物の柄や色と上手くコーディネートすることで雰囲気が大きく変わります。色の合わせ方はもちろん、素材によって柔らかい雰囲気だったり、涼しげにみせたりすることもできます。季節に合った帯揚げを上手に選んで、自分だけのコーディネートを楽しんでください。