「黒留袖に関するマナーってどんなものがあるのかな…」と疑問をお持ちの方はいませんか。
黒留袖は留袖の中でも最も格式の高い第一礼装です。しかし、着物に関してあらかじめ知識を持っている方は少ないですよね。
そこで今回は、
- 黒留袖の4つのマナー
- 黒留袖を身に着ける際に気を付けたい4つのポイント
- 黒留袖に合わせる髪型について
の順に詳しくご紹介します。
実際に着用する前にマナーを把握しておくことで、自信をもって着られます。着物初心者の方にもわかりやすい内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
黒留袖を選ぶときに気にしたい4つのマナー
もともとは若い女性が着る振袖の長い袖を短く切って、脇部分を縫い合わせた着物をデザインにかかわらず「留袖」と呼んでいました。
現代における留袖とは、単に袖が短く、裾部分に模様が入れられた着物を指します。胸や肩の部分に模様が入ることはありません。
江戸後期の芸者が着て人気に火が付き、一般層にも広く流行しました。当時は振袖から進化した普段着用の和服でしたが、現在では意味合いが違います。詳しく説明しますね。
黒留袖を使う場面を把握する
振袖をリメイクしたものが留袖という概念があったので、本来はさまざまな色のラインナップがありました。
しかし明治時代に入り文明開化の中で、西洋のルールが取り入れられ、ブラックフォーマルに当てはまる「黒留袖」が誕生しました。そのため普段着使いはせずに、おめでたい席などの格式が求められシチュエーションに限定されます。
ちなみに皇室では「黒」は喪に服すという意味が強いため、使用されることはありません。
黒留袖を着るべき人を把握する
先にご紹介したように、歴史的背景から黒留袖を着るのは未婚女性ではなく既婚女性に限られます。
結婚式で着用するのが主な用途なので、
- 新郎新婦の母親
- 祖母
- 近しい親族(姉妹やおば)
- 仲人を務める女性
などが対象です。
主催者側の女性陣が、式に招いたゲストに感謝の気持ちを表現するために身に着けます。よって既婚者でも友人や同僚として参加する場合は、マナー違反になるので気を付けてください。
また新郎新婦のどちらか一方の家族のみが黒留袖を着てしまわないよう、両家で衣装ランクのバランスを取るのも忘れずに準備します。
黒留袖の独特のルールを知っておく
・紋の数
黒留袖には「5つ紋」という家紋を5つ入れるルールがあります。家紋が分からない場合や、レンタル衣装の場合はどなたが着ても問題のない「通紋」を使用します。
紋が入る場所は、
- 背中
- 両袖の裏
- 両胸
の5か所です。
紋の数でランクが変わるため、ゲストとして出席する結婚式には3つ紋以下の色留袖を選ぶようにしましょう。
・比翼仕立て
昔は着物を着る際は長襦袢などの肌着を重ねるのが一般的でした。しかし現在は実用性を考慮して、重ね着はしません。
その代わりに、あたかも重ね着しているかのように見える白生地を縫い合わせます。それが「比翼仕立て」と呼ばれる加工です。
黒留袖の柄の用途を知る
柄に関しては、年齢により異なります。
40代~50代以上の方であれば、できるだけ裾の低い位置に模様があしらわれたデザインを選ぶのがおススメです。またパターンについては、鮮やかな花よりも古典的な松竹梅などが品格を出しやすい模様パターンです。
反対に20代~30代の若い世代には、膝のあたりまで模様が入っているのがおススメです。華麗で可愛らしい中にも、黒が醸し出す気品を演出できます。
黒留袖を着用するときのマナーと4つのポイント
ここでは着用時のマナーと4つのポイントを解説します。
動画で着用方法を知りたい方はすなおさんの動画をご覧ください。
黒留袖を着用するときのマナー
・イヤリングやネックレスはつけない
着物全般に言える点ですが、イヤリングやネックレスなどのアクセサリーは身につけないようにします。留袖が誕生した当時は、そのようなアクセサリーは存在しておらず風習が無かったことによります。既婚女性らしく結婚指輪のみにしましょう。
ネイルに関しても基本的にはNGです。どうしてもネイルをする場合は、落ち着いたベージュなどの淡いカラーを入れるように気を付けてください。あまりにも華美なアクセサリー外して、より留袖の気品を際立たせるよう意識してくださいね。
・インナーは白をセレクト
着物は非常に繊細で汚れが付きやすいです。特に汗によるシミを防ぐためにもインナーは大変重要です。
その場合、インナーにあたる肌着や長襦袢は必ず白にしてください。汚れ防止のためでなく、長襦袢はあえてチラ見せするのが標準的な着こなし方法だからです。
特に長襦袢の襟部分に縫い付ける「半襟」は白を選ぶのがマナーです。
黒留袖を着用するときの4つのポイント
黒留袖の「紋」
先にもご紹介しましたが、黒留袖には紋を入れます。
第一礼装としての紋は「染め抜き」という部分的に染め分け、柄を浮かび上がらせる染色方法により仕上げられます。そのため、刺繍などで紋が入ることはありません。
レンタルする場合は、シールタイプの「貼り紋」で対応します。特に紋デザインにこだわりがない人や、自分の家の家紋が不明な人は、「桐」の家紋を貼り付けるのがスタンダードです。
家紋には多くの種類がありますが、中でも桐は菊と並んで皇室でも取り扱われるほどの意味があります。そのため困ったときには桐と覚えておいて損はしませんよ。
もちろん自分の家の家紋が分かっていれば、それに越したことはありませんので1度確認してみるのも良いですね。
黒留袖の「柄」
柄にはそれぞれ込められている意味が違います。慶事にはおめでたい意味をモチーフを選ぶようにしましょう。
例えば、
- 扇子:末広がりの形状から発展や子孫繁栄を意味する
- 七宝つなぎ:円形が無限に連なった七宝は、平和や家庭円満の象徴
- 松竹梅:おめでたいもの代表
- 鳳凰:不老不死や繁栄の象徴
- 松葉:松の葉は2つで1つの葉となるので、夫婦円満を意味する
などが縁起の良い柄とされています。
その他にも多種多様な柄がありますが、込められた意味から留袖をチョイスするのもおススメです。
ただし黒留袖を着る機会はそこまで頻度が高いわけではありませんよね。したがって、あまりにも季節感を感じるものは望ましくないです。どのシーズンでも着られる汎用性の高い柄を見つけてください。
黒留袖の「帯」
帯を合わせる際も、着物との格式バランスを考慮する必要があります。黒留袖には「袋帯」を使います。
袋帯とは、表地と裏地を別々に織り袋状に仕立てた帯のこと。裏地が無地のため軽いのが特徴です。サイズは幅が約31cm、長さが4m20cm前後が主流です。
金や銀など箔がほどこされた少しゴージャスかなと思うくらいのデザインの袋帯で締めると、上品さを演出できます。
黒留袖に合わせる場合の結び方としては二重太鼓結びが一般的に広く認識されています。
帯締めや帯揚げには白を選ぶようにしましょう。
黒留袖の「小物」
小物については、バッグと草履をどうコーディネートするかが悩ましいですよね。
まず草履に関してですが、かかとが5cm程度の高さの「礼装用草履」をはきましょう。色は白地に金や銀などで彩られたもの、素材は布地やエナメルが一般的です。
バッグも草履と同様に礼装用を使用します。草履とバッグはデザインや素材が共通のセットになっているものが使いやすくて便利です。
さらにバッグ以外にも、「祝儀扇」とも呼ばれる末広の扇子を体に添えるのもおススメです。集合写真やゲストのお見送りなどの際には、手にもって留袖に合った雰囲気をつくると上品に見えます。
黒留袖のかんざしや髪飾りのマナー
和装時には着付けだけでなく、髪型をどうするのか迷いがちですね。ここでは「かんざし」と「髪飾り」について説明します。
かんざし
髪飾りの中でも「かんざし」は伝統的な和のイメージが強いアイテムです。
種類も豊富で、
- 漆塗りの木製
- 金や銀を使った金属製および真鍮製
- べっこうや象牙などの高級品
- プラスチック製
など幅広いラインナップがあります。
注意点は、主役になる花嫁より目立たないことです。また着物同様に意味が込められた柄付けがされているので、場の雰囲気に合わないデザインのかんざしは避けましょう。
髪飾り
髪飾りには基本的にかんざしなどの、日本の伝統工芸を選ぶと失敗がありません。しかしその分、値段も高額になりがちです。付ける頻度がそこまで高くないのであれば、プラスチック製のシンプルなものも最近はよくあります。
あくまでもメインは留袖なので、ヘアアクセサリーは留袖を引き立たせるアイテムと認識するのがルールです。
したがって、
- あまりに華美なものは付けない
- サイズが大きな飾りは避ける
- 古典的な柄付けがされたものを選ぶ
などに注意して探してみてください。
種類が非常に多いので迷ってしまうかもしれませんが、留袖の色やデザインに似たものを探すとしっくり来ることが多いです。統一感を出すように気を付けて、上品にまとめてくださいね。
まとめ
黒留袖について理解しておく必要がある4つのポイントは以下のとおりです。
- 普段使いではなく結婚式などの格式が求められるシーンのみで着られる
- 新郎新婦の母親や親族など、主催者側にいる既婚女性が身に着けるもの
- 紋や比翼仕立て、柄などの独特のルールが存在している
- 年齢層により柄のボリュームを調整する
独特なルールとは、
- 紋は5つ紋が基本。家紋が分からなければ桐紋がおススメ
- 柄はひとつひとつに意味があることを意識し、季節にとらわれない万能なものが良い
- 合わせる小物は白がベース。着物同様にあしらわれた柄の意味を考慮して選ぶと良い
結婚式におけるゲストをもてなす際の、第一礼装としてふさわしい着こなしをマスターしましょう。おめでたい席に最高の思い出を作るためにも、マナーを守って黒留袖を着こなしてくださいね。
おまけ
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