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母親は黒留袖しか着てはいけない?
最近では結婚式・披露宴にて母親は和装の黒留袖、父親は洋装のモーニングやタキシードといった服装で参列する場合が多いかと思います。
なぜ父親と母親で洋装、和装の組み合わせなのでしょうか。
以前は和装婚が一般的だったため、父親も正礼装の紋付き袴を着用していました。
近年、キリスト教式が増加し、父親はバージンロードをウェディングドレス姿の花嫁と一緒に歩くことから洋装のモーニングやタキシードがメインとなっていったようです。
本来は格が合っていれば良いため、父親が正礼装の紋付き袴でも全く問題ありません。
一方、母親は目立った出番が少ないこともあり、父親と比べて洋装化の流れは少なかったと言えるでしょう。
女性の洋装での正礼装はアフタヌーンドレスやイブニングドレスになります。
どちらもロングドレスのことで、最も格が高い服装になり、洋装の場合でも「黒」が一般的となります。
そのため、あまりに控えめになってしまうと喪服のような見た目になってしまいます。
コサージュなどをつけることで華やかさをプラスできますが、両家でその加減を合わせるのが難しいともいえるでしょう。
また、イブニングドレスは、肩や胸元は隠し過ぎず光沢のある生地感や煌びやかなジュエリーを纏いドレスアップするものですので、肌の露出を気になさる方もいらっしゃいます。
一方で、黒留袖は黒地がベースでありながら、金銀の帯や、裾にかけて模様が入っていることもあり、華やかさを添えることができます。
体形を拾いにくく、年代にあった華やかさ・上品さを出すことが出来ることからも、黒留袖を選ばれる方が多いようです。
両家や新郎新婦の意向、挙式会場や披露宴会場の雰囲気を考慮して和装か洋装か検討されることをおすすめします。
そもそも黒留袖とは?
留袖は袖が短めで、裾だけに模様が入った着物のことです。
その中でも黒留袖とは、地の色が黒の留袖のことです。
着物のなかで最も格の高いとされている第一礼服(正礼装)にあたります。
いくつか黒留袖の特徴があるので、せっかく着用するのであれば知っておくとよいでしょう。
紋
背中と両胸と両後袖に最上格となる「染め抜き日向紋」で合計5つの家紋(五つ紋)を入れるのが決まりです。
レンタルの場合は、家紋の部分だけシールのように貼り替えられる貼り紋や、便宜上の紋として誰でも自由に使える通紋などを使います。
そのため、ご自身の家紋が分からなくても心配ありません。
柄
胸や袖など、上半身は無地で柄がなく、裾まわりに柄が入っています。
描かれる柄は、縁起のよい吉祥文様や重厚な有職文様など、格調の高いものが多いですが、最近ではモダンな柄など多少流行もあります。
ご自身のお好きな柄を選ばれると良いでしょう。
仕立て方
「比翼仕立て(ひよくじたて)」という仕立て方になっているのも、黒留袖の大きな特徴です。
昔は重ね着が本来の着方だったため、長襦袢という下着の上に白羽二重の着物と黒留袖を二枚重ねて着ていました。
それがいつしか簡略化されるようになり、衿・袖口・おくみ・裾部分など、外から見える部分だけに白羽二重の布を縫い付けて、重ね着しているように見せる比翼仕立てが主流になりました。
比翼仕立てにはお祝い事が重なりますようにという意味も込められています。
結婚式で黒留袖を着るのは?
結婚式で黒留袖を着用できるのは新郎新婦の近しい親族です。
新郎新婦の母親
新郎新婦の母親が和装にする場合は、礼装のなかでも最も格の高い五つ紋の入った黒留袖の着用がおすすめです。
新郎新婦の親族(祖母、叔母、姉妹など)
新郎新婦の姉妹や祖母、叔母など親族が結婚式に着物で出席する場合は「正礼装」や「準礼装」にするのが一般的なマナーです。
新郎新婦の母親が黒留袖ならば、親族の既婚女性は黒留袖や色留袖、未婚女性なら振袖がふさわしいでしょう。
また、地域によっては親族の女性は全員が黒留袖を着用することになっているところもあります。あらかじめ結婚式前によく確認して、両家親族の装いの「格」を合わせるようにしましょう。
仲人夫人
仲人夫人として結婚式や披露宴に出席する場合は、黒留袖がもっともふさわしいとされています。
結婚式で黒留袖を着てはいけない人は?
新郎新婦の近しい親族が黒留袖を着るのは、最も格式の高い着物を身に着けて招待した方を迎えることで、足を運んでいただいたことに対して礼を尽くし、感謝の気持ちを表しているからなんです。
そのため、結婚式に招待された友人や同僚、仕事仲間などのゲスト側が黒留袖を着るのは、マナー違反になります。
既婚女性なら黒留袖より格下の一つ紋の色無地や付け下げ・訪問着・江戸小紋など準礼装から略礼装にあたる着物がおすすめです。
未婚女性の場合は振袖で結婚式に花を添えるのも喜ばれます。
黒留袖のコーディネート
一口に黒留袖といっても、柄や帯などでお好きにコーディネートすることができます。
とはいえ、基本的な考え方としては、正礼装(第一礼装)としてふさわしい格式の高いコーディネートにする、という点がポイントです。
柄
黒留袖の中でも柄の入り方が異なります。
裾の模様が大きめでひざ上程度にまで模様が入るデザインはより若々しい印象になります。柄も鮮やか、または淡い色味の花模様を選べば、よりかわいらしい雰囲気に近づきます。
地色が黒でも柄行が鮮やかな黒留袖に華やかな帯を合わせることで、黒留袖でも若々しい装いが可能です。
一方で、より落ち着いた印象にしたい方は裾模様の面積が小さく、模様の入る位置も低いものがおすすめです。
大きめの柄よりも、すっきりとした模様の入ったデザインがよいでしょう。
絵柄の色味にも注意し、抑えめのトーンで色数が少ないものを選んでください。
帯
帯は錦織や唐織、綴れ織などの重厚で華やかな袋帯を合わせます。
和装小物
帯揚げや帯締めは白色が基本です。また、帯には末広と呼ばれる祝儀扇を挿します。その他、着付け小物として欠かせない長襦袢や半衿、足袋も白色を合わせます。
履物・バッグ
草履やハンドバッグも礼装用がふさわしく、素材やデザインを合わせたセットのものがおすすめです。
その他
黒留袖だけではなく和装では、アクセサリー類は結婚指輪以外つけないのが基本です。
メイクや髪型も、結婚式の主催者としての立場を考慮し、黒留袖の気品や美しさがより引き立つと同時に、お客様に礼を尽くした装いになるよう心がけましょう。
結婚式で黒留袖を着用されるのであれば、その特徴やマナーを覚えておくとより素敵に着こなすことができるでしょう。