「小紋の柄ってどんな種類があるのかな」と疑問をお持ちの方はいませんか。小紋にはさまざまな種類の柄があり、着るシーンによって使い分けることが可能です。
そこで今回は、
- 小紋の概要
- 柄の種類
- 小紋を選ぶ際のポイント
の順に詳しく解説します。
小紋を身に着ける際には、選び方やルールなど悩んでしまいますよね。今回の記事は、そのような疑問をお持ちの着物初心者の方でも分かりやすい内容になっています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
小紋とは?
・概要
小紋とは「同じ模様が同じ方向に繰り返し入っている着物」です。カジュアルなものからドレスアップされたものまで幅広いラインナップで展開されています。洋服で言うと、きれいめのワンピースのようなものと考えて支障ありません。
・特徴
「型染め」と呼ばれる技法を使って染められています。古くは、模様のサイズによっては大紋や中紋と区別していました。しかし、現代においては模様の大小に限らず、総称して小紋と呼んでいます。
大きく分けると以下の3種類です。
江戸小紋
江戸時代の大名が正装時に着用していた着物が発祥。一見すると無地に見えるほどの小さく細かい模様が特徴です。またほとんどのものが素材は絹のみで、色は単色です。
しかし、現代は江戸小紋の技法を使いながらも、さまざまな素材や色を組み合わせた「東京おしゃれ小紋」という新しいジャンルもあります。
京小紋
型染めと京友禅の技術を合体させたもので、明治時代に入って京都で流行しました。模様が大きいという特徴があり、華やかな印象を与えるものが多いです。数種類の型紙を使用して染めるため、色も多様で鮮やかな見た目です。
加賀小紋
京小紋に影響されて現在の石川県でつくられた小紋です。手描き友禅と型友禅という2種類ありますが、どちらも加賀友禅の技法が使われています。刺繍や金箔加工などを使わないため、優しく女性らしい印象を持っています。
・主な用途
主な用途としては、以下のようなシーンが想定されます。
- お稽古ごと
- 観劇
- 同窓会
- 友人との食事会
- 卒業式(袴を合わせて)
あくまでも日常使いの外出着なので、礼装ではありません。普段着用の着物という認識を持つようにしましょう。
ただし、紋付の江戸小紋は準礼装にランクされるので例外です。場合によっては結婚式などの形式ばったイベントに着用しても問題ないです。
小紋の柄の種類
ここからは小紋の模様についてそれぞれ詳しくご紹介しますね。
幾何学的な柄
三角形や円形、線などのさまざまな図形を繰り返してつくられた模様を幾何学模様と言います。その成り立ちからシンプルで落ち着いた印象を与えます。
代表的な幾何学模様は以下のとおりです。
柄の種類 | 意味、印象 |
宇治川 | 宇治川とは京都にある川です。 鎌倉時代に起こった宇治川の戦いで、 先陣をきった佐々木家の家紋「隅立て四つ目」があしらわれた柄です。 |
大小霰 | 江戸時代の薩摩島津藩の定め柄です。 大小の霰(あられ)が空から落ち、 地面に当たっている様子を表している柄です。 |
紗綾形 | 「卍」という字を四方向に連ねた柄です。 そのため別名、「卍崩し」や「卍つなぎ」とも呼ばれています。 地紋によく使われ、格調の高い印象をつくります。 |
鱗 | 三角形を上下に連続させた柄です。 室町時代から使われてきました。 魚や蛇の鱗をモチーフにしており、身を守るという意味から縁起が 良い柄とされています。 |
縞 | いわゆるストライプが縞です。 縞模様の中でも特に細かいストライプ柄を「万筋」と言います。 シンプルでありながら、高度な技術を要する縞模様は、江戸時代に粋を表すとして重宝されました。 |
七宝つなぎ | 円形が無限に連なった七宝柄のことです。 平和や円満を意味する輪があしらわれた非常に縁起の良い柄とされています。 |
鮫 | その名の通り、鮫肌のような細かい模様です。 遠目に見ると無地に見えるほどの細かさが特徴で、 高級ちりめんに鮫柄をあしらうとキラキラと美しい印象を与えます。 |
角通し | 小さな正方形が縦横に連続して配置された柄です。 縦にも横にも筋を通すという意味を持ち、格式が高いとされています。 |
行儀 | 小さなドットで構成された柄です。 仙台藩の伊達家が定めました。 行儀よく斜めにお辞儀をした形が由来と言われています。 |
市松 | いわゆる格子柄、チェック柄です。 無限に広がっていく様子から、繁栄という意味が込められています。 |
亀甲 | その名の通り、亀の甲羅をイメージした六角形の柄です。 亀は長寿の象徴であり、長生きできるようにという願いが込められていると言われています。 |
青海波 | 波が永遠に続くイメージの柄です。 シルクロード経由で、平安時代に古代ペルシャより伝わったとされています。 青海波という名前は同名の雅楽を舞った人名が青海波だったということに由来しています。 波のように平和が長く続きますようにという願いが込められています。 |
麻の葉 | 大麻の葉をかたどった六角形の模様です。 麻は成長が早いため、小さな子供が健康に育ちますようにという願いが込められています。 |
この中でも、
- 鮫
- 行儀
- 通し
の3つを江戸小紋三役といい、格式が高いとされています。
上記の3つに次いで格式の高い、
- 大小霰
- 縞
の2つを合わせた5つを江戸小紋五役と呼びます。
生活道具ををモデルにした柄
幾何学模様に続いて、生活道具をモデルにした柄(器物文様)をご紹介します。
具体的には以下のとおりです。
柄の種類 | 意味、印象 |
扇子 | 扇子は、その末広がりの形状から発展や繁栄を意味していると言われています。 結婚式や成人式など、おめでたい席で使用される頻度が高いです。 |
鼓 | 鼓とは美しい音を出す砂時計型の伝統和楽器です。 古くから神聖な儀式や祭りで使われてきました。 そのため、鼓柄には「実がなる」から派生して、豊作や成功という意味が込められています。 |
几帳 | 几帳とは、平安時代に使われた部屋を間仕切るパーテーションのようなものです。 華やかなイメージを与えます。 |
文字を基調とした柄
模様の中には文字を基調とした、「文字文様」があります。
柄の種類 | 意味、印象 |
福、寿、吉、夢、花鳥風月など | 縁起の良い文字を並べて模様にした柄です。希望や願いの意味があります。 |
動物や植物をモデルにした柄
花などの植物や、動物があしらわれた柄は非常に多いです。季節を彩るものや、個性を出すのにぴったりの柄があります。その生態や特徴から様々な意味を込めています。
柄の種類 | 意味、印象 |
鍋島 | ごまの実の断面図がデザインされたものです。鍋島藩が使っていたことが由来です。 |
松竹梅 | おめでたいもの代表とされる松竹梅。非常に縁起の良い印象です。 |
四君子 | 竹、梅、蘭、菊の4つを組み合わせた柄です。高潔で気品の高さを表します。 |
シダ | シダ植物はお正月の飾りとして使われるため、おめでたいことを意味します。 |
鳳凰 | 架空の生き物の鳳凰は、不老不死や長寿を意味します。 |
天馬 | 翼をもつ馬である天馬は、気品の高さや美しさを強く印象付けます。 |
龍、竜 | 龍は天高く昇っていくため、栄光や発展の象徴とされています。 |
花喰鳥 | 花や花枝をくわえた鳥のことで、幸せを運んでくるという意味が込められています。 |
唐草 | 蔓や蔦が絡み合って伸びていくデザインです。 長く伸びることから生命力の強さを表しています。 |
宝相華 | 牡丹や蓮などの美しい花を部分的に組み合わせてつくられた想像上の花模様です。 |
縁起物をモデルにした柄
柄の種類 | 意味、印象 |
松葉 | 松の葉は、2つの葉が1つでくっついており離れません。 そのため離れ離れにならないようにと夫婦円満の意味があります。 |
矢絣(やがすり) | 矢絣とは、矢羽をモチーフにしています。 射た矢羽は戻ってこないということから、結婚で嫁入りしても戻ってこないという意味があります。 |
籠目 | 籠を編んだ模様が連ねた柄です。 一筆書きの星のような見た目となり、魔除けや厄除けの意味があります。 |
打出の小槌 | 古くから伝説に出てくる架空の道具が小槌です。 小槌は振るたびに望んだものが出てくるため、富の象徴や希望が叶うという意味があります。 |
金嚢(きんのう) | 金嚢は七福神の大黒天が担いでいることで有名な巾着袋のことです。 中には金貨などの宝が入っていることから、財を成すという意味があります。 |
小紋を選ぶ時のポイント
季節にあった小紋の柄を選ぶ
柄が多種多様なので、四季を考慮して選べば様々なシーンで使い分けができます。
例えば春なら桜柄、冬なら椿柄など季節に合わせた柄を選ぶことで趣のある雰囲気を作り出せます。
年齢にあった小紋の柄を選ぶ
小紋の柄については無理に年齢を気にする必要はありません。しかし、若い人は大きな柄のもの、年を重ねた人ならば出来るだけ小さい柄というように年齢にあった柄を選べば自然に美しい雰囲気を出すことができます。例えば、鮫小紋は遠目だと無地に見えるほど、繊細な柄なので大人のイメージにぴったり合います。
利用シーンにあった小紋の柄を選ぶ
利用シーンに合わせて柄を選ぶのが上級者です。例えば、古典的な柄や、龍や鳳凰などの縁起の良い柄であれば結婚式などのおめでたい席にぴったりです。一方で、幾何学模様であれば友人との食事会や観劇を見に行くときなどの、ちょっとしたおしゃれ着に最適ですよ。
まとめ
今回は小紋と多様な柄の種類について詳しくご紹介しました。
- 小紋は基本的には普段使いの外出着で、礼装にはならない。
- 小紋の柄には、植物や動物をモチーフにしたものや幾何学模様などそれぞれに意味が込められている
- 季節やイベント、年齢に合わせた柄を選ぶのがポイント
ただし、絶対的なルールがあるわけでもないので、自分の好みや気分次第で選ぶのも1つの手です。柄選びに困った際は、意味や与えたい印象を考慮して、小紋のバリエーション豊かなコーディネートを楽しんでください。