「紬ってどんな着物?」
「有名な紬の種類が知りたいな」
このような疑問を抱えてはいませんか?
本記事では紬についてその特徴や用途、代表的な紬の種類まで徹底的に解説します。
これから紬を着ようと考えている、紬に興味があるという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
紬とは
紬とは、紬糸などを使った先染めの織物のことを指します。
紬は、蚕の繭から糸を引き出した絹糸が布表面の生地になっており、絹独特の光沢感が出ることが特徴です。
先染めとは、糸の状態で染めてから織りで柄を表現する手法で、あらかじめ染めた糸を手機や機械を使って織られている、非常に繊細な技術を要する手法です。
白生地から様々な技法を駆使して模様が染められる後染めに比べ、先染めは模様が糸に染まるまで長い時間がかかることが特徴です。
そのため紬を一つ織るのにも、大変なコストと時間がかかるのです。
また非常に丈夫であることから、古くから普段着や野良着として使われていました。
江戸時代には贅沢禁止令で絹のような高級な織物を着ることが禁止されましたが、多くの商人が紬を着ることを諦めきれず「絹ではなく木綿だ」と言い張ってまで着るほど人気な着物であったようです。
現代でも紬は普段着からおしゃれ着まで着まわしやすく、多くの方から愛されている着物の1つです。
紬には大島軸、久米島軸など地域それぞれで織られた紬があります。どれも異なった特徴を持っているため、どれを選べばいいのか迷いますよね。
次の項では代表的な紬を紹介していきます。
代表的な紬
代表的な紬は4つの紬が存在します。それぞれ各地域の特色がにじみ出ている美しい紬です。特徴を抑えていきましょう。
大島紬
大島軸は、鹿児島県南部に位置する奄美大島半島で織られた紬です。
奄美大島では、奈良時代以前から車輪梅(テーチギ)と呼ばれる草木染めが行われていました。
大島紬は伝統的な泥染めが有名です。泥染めとは何度も染料に浸した糸を泥田につけて揉み込む手法。泥染めによって、大島紬の頑丈で美しい風合いが表現されています。
泥染めの由来は、前述した江戸時代の贅沢禁止令からです。役人に紬がばれないよう、商人は紬を田んぼに隠しました。役人が去ったあとに引き上げると、紬が黒く染まって独特な風合いになっていたのです。そこから現代まで受け継がれている伝統的な泥染めが始まったそうです。
大島紬は着た時にシワになりづらく、絹100%からなる艶感のある軽い肌触りが特徴です。
用途としては、お洒落着として使うことが多いですが、柄によっては格下げや訪問着としての活用も可能。
一つの大島紬を織るのには半年〜1年とかなりの時間を要します。高度な技術で織られているため、その分かける時間も多くなるのですね。
大島紬には、「白大島」「藍大島」「草木染大島」「泥大島」など種類が豊富に揃っているのも特徴の一つです。
久米島紬
久米島紬は、沖縄県・久米島で織られた紬です。
歴史を辿ると、久米島紬は沖縄県が琉球王国の時代から織られていた織物でした。今もその伝統を保っており、製造は手作業、模様や染付は最後まで1人の職人が行います。
1人の職人が手作業で1から作るため、職人の思いが込められた着物といえるでしょう。
各地域の紬絣製法は久米島紬が起点となっており、久米島は紬発祥の地とも言われています。
久米島紬の特徴としては、素朴でしなやかな風合いがあり、独特な赤みがかった黒色で光沢を持ちます。
昭和50年には、伝統工芸品として指定を受け、2004年には国の重要文化財に認定されました。
牛首紬
牛首紬は、石川県・石川郡白峰村で織られた紬です。
牛首紬の特徴は耐久性に優れたハリのある風合い。その丈夫さは、釘を引っ掛けても破れずに釘の方が抜けてしまうほど丈夫だと言われており、「釘感紬」という別名も。
牛首紬の製法では玉繭を使用しており、玉繭から直接手作業で糸を紡ぎ出す「のべびき」という伝統技法を用いています。
玉繭から糸を引き出すのは至難の技であり、経験豊富な職人の技術が必要となります。この製法にかける手間が、牛首紬の丈夫でハリのある美しい風合いを引き出していると言っても過言ではありません。
結城紬
結城紬は、茨城県・結城市で織られた紬です。結城紬は奈良時代から続く高級な織物として有名で、古くから多くの富裕層が好んで着ていました。
もともと、結城市は養蚕が盛んに行われており、農業の仕事が暇になった時に副業として紬を作っていたのが、結城紬の始まりとされています。
結城紬の特徴は、ふわっとした肌触りで温かみのある使い心地。秋〜冬の季節にかけて重宝する着物でしょう。
柔らかくて体に馴染みやすく、着崩れもしにくいです。
本場結城紬は更に体に馴染みやすく、重要無形文化財の保護団体の高い技術によって織られたものです。
紬着物の気になるポイント
着物にはそれぞれ場所や場面に適した着物があります。用途を間違えると失礼だと思われたりすることもあるので、注意しなければなりません。
では、紬着物はどんな場面や場所で使われる着物なのでしょうか?
紬着物のTPOを紹介します。
どんな時に着ればいいの?
紬着物は、一般的に普段着やおしゃれ着として使われます。
- ちょっとした食事会
- パーティー
- 趣味
- お稽古
以上のような時に使われるので、着物の中でもカジュアルな着物として重宝します。
「普段から着物を着る機会が多い」「プライベートでも気軽に着物を楽しみたい」という方に紬着物は向いていると言えますね。
着用がふさわしくない場所は?
上記とは逆に、紬着物がふさわしくない場所もあります。
- 結婚式
- 式典
- 卒業式
以上のような礼装が基本とされる場所では、紬着物はふさわしくないでしょう。ただし、無地の黒紬であれば、使える場合もあります。
その際には帯の柄などにも気を配るよう心がけましょう。
紬と絣の違い
本記事で紹介している紬の他に、「絣」(かすり)と呼ばれるものがあります。絣とは、絣糸が使われている柄やそれらの技法のことを指します。
絣糸とは、色がつかないように前もって染めた糸を経糸、緯糸、またはその両方に使用して織り上げたものです。
絣の技術はインドで生まれ、日本に伝わったとされています。似たような技法は東南アジアはじめ世界各地で多く見られ、ポピュラーな織物技法の一つです。
絣糸は現在でも幅広い用途で使われていて、ネクタイやシャツ、もちろん着物にも使われています。
絣のよくある間違いとして多いのが、【かすれた柄=絣】という間違った認識です。
絣が意味するのは、絣糸を使った柄のこと。
かすれた柄で絣糸を使っているのであれば、「絣」と呼ぶことは間違いではありませんが、ただかすれた柄を「絣」と呼ぶのは間違いです。
一方、紬は紬糸を使って織られた平織物の布や和服のことを指します。柄をだすために絣糸が使われています。
紬と絣が間違われやすい理由
着物を初めて着る方は「絣と紬は何が違うの?」と思う方が多くいらっしゃいます。
この2つはよく混同されやすいですが、前述したようにその意味合いは大きく違うのです。
最も間違われる理由は、「絣糸を使った紬がある」ということでしょう。
紬は先染めという製法で織られており、その際に使う糸はあらかじめ色を染めた絣糸です。
基本的に「紬=絣糸を使った着物」であるため、紬と絣を混同してしまう人が多いのでしょう。
紬と絣を間違えないようにするには、以下のような覚え方をしておけば問題ありません。
「紬=布・和服」
「絣=柄・技法」
紬と絣の違いを理解しておけば、これから着物選びの役に立ちますよ。
まとめ
いかがでしたか?今回は紬についてその特徴、代表的な紬を紹介しました。着物初心者の方がよく誤解される紬と絣の違いについても、理解いただけたのではないでしょうか。
紬はちょっとした食事会やパーティーなどカジュアルな場面で活躍する着物です。普段着で着物をよく使う方にとってはとても重宝する着物です。
気をつけてほしいのは、礼装の場面には向いていないということです。結婚式や式典、卒業式などでは紬は選ばず、振袖や留袖などのフォーマルな着物を選んでくださいね。
紬は独特の光沢感があることが特徴です。職人が撚りをかけて織り上げた着物は着心地もよく、耐久力にも優れています。
長く使えることも紬独自の魅力の一つですので、1着持っておいても損のない着物です。