帯締めには、紐以外にもバックルやリボン、革素材やレースなど色々な種類があります。もともとは帯を留めるためのものでしたが、現代では帯締めは着物の装いを楽しむ役割の方が大きいでしょう。この記事では、自分らしい着物の装いを楽しむための帯締めの選び方、コーディネート例などを中心に、帯締めについて詳しく紹介します。
目次
帯締めとは
着物を着る時に必ず締める帯締めですが、どんな役割や種類があるのでしょうか。まずは帯締めの歴史とブランド、格といった、帯締めの基本について詳しくみていきましょう。
帯締めについて
帯締めは、帯が崩れないように締める紐のことで、帯を結んだ後、帯の上から最後に結びます。着物全体の中央部分にあるので、色や飾りで全体の雰囲気が変わります。
現代では帯の崩れ防止よりも、コーディネートとしての役割が大きいです。帯締めは女性の着物だけに使うものであり、男性用の着物では使用しません。
帯締めの歴史
帯締めの歴史は奈良時代から始まったと言われています。帯締めは当初、貴族や武家が使用するものでした。最初の頃は「丸ぐけ」といった、丸く巻いた布に綿を詰めたものが使用されていました。
江戸時代に入り、お太鼓結びが定着してくるとともに、帯をしっかりと支えるために一般人にも普及しはじめたと言われています。しかし一般にも普及してくると、組紐技法によって作られるようになり丸ぐけはあまり使用されなくなりました。
帯締めのブランド
帯締めには、手組と機械組の二種類があります。
手組の帯締めは、人の動きによって伸び縮みするため、締めていても苦しくないのが特徴です。伝統工芸品としての価値も高く、五嶋敏太郎が確立した「五嶋紐」や、創業360余年の老舗「道明」は、日本を代表するブランドと言われています。
一方、機械組には化繊のものもあります。絹はほどけにくいため絹を選ぶ人が多いですが、化繊には洗いやすいという長所もあります。
帯締めの種類
帯締めの種類には「丸くげ」と「組紐」の二種類があります。丸くげとは、布を筒状にしてその中に綿を入れた紐のことをいいます。
初期の頃は丸くげを使用していましたが、茶事で着る和装に合わせるもの使うようになり、丸くげよりも種類の多い組紐が普及し始めました。
組紐は、組みあがった紐の形によって名称が変わります。大きく分けると、平組、丸組、角組の三種類に分かれます。
平組紐(平打ち)
きしめんのような形をした組紐です。他の組紐と比べて厚みがあるので、締めた時に安定感があります。平組紐は最も格が高い組紐で、特に幅の広いものは振袖や留袖のような第一礼装に使用します。幅の狭いものは、夏用の着物やおしゃれ着などに使用します。代表的なものでは「冠組」「高麗組」「三分紐」があります。
冠組
平安時代、武官の冠に使用されていた組紐が冠組です。中央に1本線が入っており、紐が二つに割れたように見えるのが特徴です。白銀や玉子色、瓶覗色といった上品な色を揃えておくと、第一礼装はもちろん、おしゃれ着にも合います。冠組は、有職組紐「道明」の組紐が有名です。
高麗組
高麗組とは、刀の下げ緒だったものが帯締めとして使用されるようになった組紐です。冠組よりも厚みがあり、幅も広めなので安定感があります。また、結びあがりが綺麗なのが特徴です。
三分紐
三分紐は、元は帯留めを通すための紐でしたが、帯留めとの組み合わせでおしゃれに使用する人が増えてきて、今では三分紐を好んで使っている人も多いです。帯留めとセットで使うので紐の結び目を気にする必要がなく、着物初心者でも簡単に結べます。
丸組紐(丸打ち)
丸組紐は、その名の通り丸い紐で表裏がありません。平組の次に格式が高く、飾りの多いタイプとシンプルなタイプがあります。丸組紐の中でも飾りが多く華やかなものは特に格式が高いので、成人式の振袖や未婚女性の礼装の時に使用します。シンプルな丸組紐は、ちょっとしたおしゃれ用や普段着などに使用することが多いです。
角組紐(角打ち)
組紐の中でも最も格が低いのが角組紐です。断面が正方形になっているので、初心者には難しい組紐とも言われています。木綿や紬といった普段着に使用することが多いです。
丸くげ
丸くげは、筒状の布に綿を入れた紐で、昔は礼装やおしゃれ着などに使用されていました。今では礼装には組紐が主流になりましたが、普段着では丸くげを選ぶ人も多いです。 カジュアルな雰囲気のものは、おしゃれ着やアンティーク着物に使用してコーディネートを楽しむこともあります。また、子ども用の着物にも丸くげが使用されています。
レース組み
透け感のある爽やかな帯締めです。主に夏用の着物で使用されており、爽やかな印象を与えます。
帯締めの結び方
帯締めの結び方には、基本の結び方と浴衣用の結び方があります。ここでは、帯締めの基本的な結び方について順を追って説明します。
基本的な帯締めの結び方
1.最初に紐を後ろに回します。前で一度結んだら、上向きになっている紐を反対に返して輪にします。
2.輪を抑えたまま反対側を持ち、1で作った輪に上から通します。
3.もう片方を下から持ち、1の輪に上から通します。
浴衣に合う帯締めの結び方
1.ひもの真ん中を持ち、後ろ側から前に回します。この時、左右の長さが均等になるようにします。
2.正面より少し右寄りに本結びでしっかりと結びます。
3.3分の1程度のひもを輪っかにして、結び目の下から上へくぐらせます。
4.反対も3と同じように輪っかにして結び目の下からくぐらせます。
5.最後に位置やサイズ、形を整えます。
帯締めの選び方
帯締めの選び方には色々な方法があります。着物の雰囲気に合わせて選ぶだけでなく、おしゃれを楽しむ選び方もあります。
そこで、帯締めの選び方にはどのような方法があるのか、詳しくみていきましょう。
着物に合わせて選ぶ
帯締めは着物に合わせて選ぶのが一般的です。例えば夏に着用する着物の場合、涼しくみえるレース素材のものや、爽やかなパステルカラーがおすすめです。礼装の場合は、白地に金糸や銀糸を用いた帯締めを合わせると、華やかで上品な印象を与えます。
TPOに合わせて選ぶ
着物同様、帯締めにも格があり、TPOに合わせて選ぶことも大切です。振袖や花嫁衣裳などの礼装の場合は、格式の高い高麗組や丸組を選ぶようにしましょう。
普段着や訪問着の場合は角打ちを使用するのが一般的です。帯留めと三分紐を個性的に組み合わせて、おしゃれな装いを楽しむのもおすすめです。
色の選び方は?
帯締めの色を選ぶ最も簡単な方法は、帯に入っている色と合わせることです。他にも着物の色や帯揚げの色と合わせると、簡単にコーディネートができます。
帯締めの色は、着物全体の雰囲気を決めるアクセントにもなります。どんな印象を与えたいか決めた上で、好きな色を選びましょう。
▼コーディネート例
・黒の帯締めに帯揚げと重ね衿を赤や黄色にすると可愛らしい印象に。
・赤い帯締めに、赤の補色である青の帯揚げで現代風な印象に。
・黒やグレーの着物に、ゴールドの帯、朱赤の帯揚げと帯締めで大人っぽく。
帯締め以外の帯周りの小物たち
帯締めを選ぶ時、和装小物の色や雰囲気に合わせて選ぶのも楽しみの一つです。そこで、帯回りに使用している和装小物にはどのようなものがあるのか紹介します。
帯揚げ
帯揚げは、帯の上の部分につける布で、昔は帯の形を整えるために使用されていました。最近では、帯揚げの色や素材で着物全体の雰囲気を変えたり、帯揚げとコーディネートしたりと、着物のおしゃれを楽しむための役割が大きいです。
最も華やかな帯揚げを使用するのが、振袖です。振袖用の帯揚げは総絞りを使われることが多く、ボリュームがあって華やかです。
帯留め
帯留めは、帯の中央部分につける、ベルトのバックルに似たようなものです。色々な形や色があり、おしゃれを楽しむ小物としても人気です。そもそもは、帯締めの上から使用して帯を止める役割として使用されていました。しかし現代ではアクセサリーとしての要素が強いので、必ずつけなければいけないものではありません。
まとめ
帯締めは、着物のコーディネートを考える時にとても重要な役割を果たします。色を変えるだけで、同じ着物でも雰囲気をがらりと変えられます。着物と格を合わせて帯締めを選ぶのは基本ですが、形や色、帯留めとの組み合わせなどでおしゃれを楽しめます。ぜひ、自分にしかできないコーディネートで着物を楽しんでみてください。