日本が世界に誇る文化として有名なのが着物文化です。着物を着る機会は非常に少なくなっていますが、年に数回は着物を着る行事がある方も多いです。
しかし、いざ着物を選ぼうと思っても種類が豊富でどの着物をどのような場面で着こなせばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、着物の種類や選び方のポイント、着物のマナーなどを詳しくご紹介していきます。着物の種類やマナーに関してお困りの方の参考になれば幸いです。
目次
着物の種類をジャンルごとにみる
季節がハッキリと分かれている日本では、着物を季節に合わせた素材や模様で着ることが一般的なマナーとなっています。
この段落では、着物の種類を各ジャンルごとに分けてご紹介していきましょう。
着物の種類を季節でみる
着物は季節に合わせて3通りの種類に変化します。きちんとした改まった席などでは、季節に合わせた着物を着るのがマナーとなっているのできちんと把握をして間違えないようにしましょう。
10月から5月にかけて着る着物『袷』
袷(あわせ)は、10月から5月にかけての気温が低い時期に着る着物を指します。浴衣などと違い透け感がないので、重量感があり着物の高級感を引き出します。
袷は裏地があるので比較的暖かく、一番長い期間着るの着物なので、よく見かける着物はほとんどが袷でしょう。
6月と9月に着る着物『単衣』
見た目はほとんど袷と同じですが、裏地が無い分軽く、透け感があるのが単衣(ひとえ)です。季節の変わり目に着る着物で、着物に付随する小物類は袷と同じものを使用する場合が多くなります。
7月から8月にかけて着る着物『薄物』
7月〜8月ほどの真夏の時期に着るのが『薄物』呼ばれる着物になります。薄物は、素材の糸の密度を大きくして風通しのよいものにした生地を使用するのが特徴です。
帯類の小物などは、薄物専用のモノを使用します。
着物の種類を生地でみる
季節や行事ごとに着物の種類は違ってきます。場面にあわせた着物を着るためにも、着物の生地の素材となっている代表的な6つの素材を理解しておきましょう。
本項目では、着物に使用される素材の特徴、実際にその素材が使用される着物を詳しくご紹介していきます。
絹
絹の特徴としてその美しい光沢が最大の特徴となるでしょう。光沢により上品さが溢れる絹は、非常に柔らかく動きやすい素材でもあります。
木綿
木綿は吸水性や通気性に優れている素材です。価格が安価なので普段着の浴衣に使用されることが多く、質感もいいので単衣に使用されることが多くみられます。
麻
通気性が高く丈夫な麻の素材の生地は、夏場の着物によく使用されます。上布と言われている高級な生地も質のよい麻を使用しているので、通気性が高く冷感もあるので夏場でも快適に過ごせるでしょう。
ウール
ウール素材の生地の着物は汚れに強く丈夫でシワができにくいのが特徴です。丸洗いすることも可能なので、管理が大変しやすくシーズン関係なく着ることができるしょう。
化繊(ポリエステル)
化繊で作られている生地は、絹や木綿などの天然素材で作られている生地よりも丈夫なのが特徴です。汚れにも強くご自宅での洗濯も可能。管理がしやすい生地なので着物をはじめて買う方にお勧めしたい素材です。
綿麻
絹と麻を合わせた生地です。両方の素材のよいところを発揮しており、絹の上品な質感と柔らかさ、麻の通気性のある汚れに強くシワになりにくいという特徴を併せ持っています。
着物の種類を柄でみる
着物の和柄にはそれぞれ意味が込められており、柄によって着用する好ましい場面があります。見た目の良し悪しだけで決めるのはあまりお勧めできません。
では代表的な柄がどのような場面に当てはまるのかをご紹介していきましょう。
鶴
鶴の和柄は『延命長寿』の象徴ともされるモノです。鶴の美しい佇まいから、結婚式などの婚礼衣装に多く用いられます。
鳳凰
中国古来の伝説の鳥として有名で、和柄として人気の高いのが鳳凰です。鳳凰は色彩が豊かな美しいものが多く描かれているので、祝いの席に着る着物には多く描かれています。
婚礼衣装に鳳凰の絵柄が入っていることも多いです。
松竹梅
松竹梅模様は、縁起のいい祝い事の席でよく好まれる模様になります。中国の方では『歳寒山友』という言葉で古来より親しまれており、日本でも昔から祝い事には欠かせない和柄です。
亀甲文
亀甲文は、亀の甲羅をイメージした模様の着物です。日本では鶴と亀の組み合わせで和柄が描かれていることが多くあり、『延命長寿』の意味を込められています。
牡丹文
牡丹の花は古来より『百花の王』とも呼ばれている縁起のいい花です。女性が着る着物には描かれている場合が多く、高貴さや美しさを表す意味が込められています。
着物の種類をシーン別で見てみる
着物の種類には、格というものがあります。格をきちんと把握し、季節やシーンによって着る着物を選ばなければなりません。
着物の格は大きく分けて「華やかな場面」と「カジュアルな場面」の2つの場面です。格が高いほど華やかな場面で着用し、格が低いほどカジュアルな場面で着る着物となります。
華やかな場面
華やかな場面とは、結婚式やパーティー、入学式などの公的儀式のことです。着物の種類としては、礼装着や略礼装着と呼び、礼装に位置する着物を着るようにします。
カジュアルな場面
カジュアルな場面で着る着物とは、街着や浴衣、普段着などのことを示します。
木綿やデニムのような丈夫で安価な生地を使用する場合が多いです。
男性の着物の種類
あまり見かけない男性の着物の種類にもきちんと格があり、着るシーンなどを選びます。
男性の着物をフォーマルな場面とカジュアルな場面に分けてご紹介してまいります。
フォーマル
特別な行事や公的な行事がある場合のフォーマルな場面では、『礼装』や『略礼装(準礼装』をしなければなりません。
結婚式や入学式、パーティーなどの行事の際にはフォーマルな格好をしましょう。
和装では、紋入りであることが非常に重要になります。具体的に、男性の最上の格と言える礼装は、黒羽二重や色紋付(日向紋に染めたものが正式)、五つ紋があり、袴なら仙台平があります。
このような着物が格が高い着物となります。
また、略礼装では、色紋付袴や3つ紋(1つ紋)などになる場合が多く、成人式や入学式などでは略礼装を着用することが多いです。
カジュアル
カジュアルな男性用の着物は、『お洒落着』や『普段着』として呼ばれ、趣味で着る着物や日常生活で使用する場面が多くあります。お洒落着は普段着の着物に羽織をした格好のことを指し、食事会などに出席する際にオススメです。
日常生活に使用するも着物なので、必要以上に上質の素材などを使用している場合は多くありません。
使用される素材としては、紬やウール、上布、木綿、絹麻などが多いです。
女性の着物
女性の着物は、男性の着物よりも細かく種類があり、シーンや季節にあった着物を選ぶのは大変です。
ここでは、女性の着物の種類を3つのパターンに分けてご紹介していきましょう。
格が高い
格が高いものは礼装着と呼ばれ結婚式などの正式な儀式の時に着用します。
礼装着には、具体的な種類があります。
例えば、打掛なら結婚式の花嫁衣装とされる着物です。他にも、結婚した女性の第一礼装となるのが黒留袖です。新郎新婦の親族や母が着る着物になります。染め抜きの5つ紋を入れるようになっているのが特徴です。
加えて、未婚の女性の第一礼装となっている本振袖も有名になります。成人式や結婚式で着用するもので、絵羽模様で袖が長いのが特徴です。
また、黒紋付の着物である喪服も格式の高い着物の一つになります。
フォーマル
フォーマルな着物の素材は主に上質な絹を使用しています。『後染めの着物』や『染めの着物』とよばれ、白い生地の着物に柄を追加していくのです。柄の違いや紋の数によっても格が上下をします。
例えば、略礼装着は、礼装よりも格が下がる着物です。華やかさもありながら上品なので、入学式や披露宴、友人の結婚式、卒業式などの行事で着用する着物になります。
略礼装着には細かな種類があるので、簡単にご説明していきましょう。
色留袖
色留袖(イロトメソデ)は、地色が黒以外の裾模様の着物です。既婚の女性や未婚の女性が公的な場にきる着物として着用します。
訪問着
絵羽つけ模様の着物。絵柄によってふさわしい場面があるので、きちんと確認しておきましょう。
振袖
未婚女性が着る第一礼装で、豪華な絵柄(絵羽模様)と袖の長い着物になります。
色無地
真っ白の生地を黒以外の色味で一色に染めた着物を指します。1つ紋をすれば準礼装として着用可能です。紋がない場合は、カジュアルな場面で着るようにしましょう。
江戸小紋
白生地に細かな柄を入れて染めてある着物です。1つ紋と格の高い絵を入れれば略礼装着として着用可能です。
カジュアル
カジュアルな女性用の着物は、趣味で着用したり、普段着として着るものが多いです。素材は木綿や麻、ウールなどを使用している着物が多く、カジュアルな食事や花火大会、お祭りなどによく着用します。
具体的な種類として、浴衣や小紋、紬などがあります。
浴衣
単衣の着物で、通気性のいい麻などを使用している場合が多いので浴衣です。カジュアルな着物の代表とも言えるでしょう。
小紋
着物全体に同じ模様が描かれた着物を指します。絵柄は均一方向に描かれているのが特徴です。
紬
紬糸を使用した着物です。街着として着用することができ、個性豊かな色合いのものが多くあります。
着物だけではなく帯にも格がある
着物に格があることはご説明しましたが、帯では織りの帯の方が格が高いとされています。
帯の格によっても着用する場面が違うので、きちんと理解して間違えないようにしていきましょう。
男性の帯
角帯
角帯は兵児帯よりも格が高いです。素材はさまざまですが礼装や略礼装には、絹糸を使用している博多織が多く使用されます。幅が約20cmの帯地が2つに折られて使用されており、長さは4mほどです。
格は兵児帯よりも高いですが、さまざまなシーンに臨機応変に使用することができます。
兵児帯
兵児帯(へこ帯)は、角帯と比べて格が低い帯です。カジュアルシーンにのみ使用できる帯なので、紬や浴衣、木綿などの着物で使用するようにしましょう。
角帯よりも模様の種類なども豊富ではないので、一見すると地味に見えてしまいます。
女性の帯
丸帯
花嫁衣装や黒本振袖などと合わせる格が高い帯になります。
袋帯
フォーマルな場面で着用する帯です。長さは4200mm以上もあり、二重太鼓と呼ばれる結び方で結んでいきます。礼装・略礼装着にも着用できる帯です。
しゃれ袋帯
袋帯よりカジュアルな格が少し低い帯になります。お洒落な柄をしているものが多いので、礼装には向いていません。
名古屋帯
織りから染物まで、幅広いパターンがあるのが名古屋帯の特徴です。カジュアルなシーンい使うことができるので、食事会などに着用します。
全通帯
帯全体に柄がある帯が全通帯です。特徴としては、さまざまな結び方ができる特徴があります。
半幅帯
互換性の高い帯で、結び方も豊富なのでカジュアルシーンに使用する帯になります。名古屋帯や全通帯よりも幅が半分なのが特徴です。
持っている着物の種類がわからない時の対処法
ご自宅で持っている着物がどのようなシーンで着用するのかなどがわからない場合も多いことでしょう。特に礼装や略礼装着として着ていいのかは気になると思います。
対処法としては、わからない場合は詳しい人に聞くことをお勧めします。
また、詳しい人がいない場合は、着物の特徴から着物の種類を知ることができるツールがあるので、そちらを使用しましょう。
- 生地の素材
- 生地の特徴
- 紋の数
- 地色
- 染柄
- 形
この6つの項目を入力するだけで、お持ちの着物を判断してくれるので非常にオススメのツールとなっています。