日本三大友禅をご存知でしょうか。
京友禅、加賀友禅、江戸(東京)友禅の3つがそれに数えられます。
今回はその中でも京友禅の魅力についてご紹介します。
目次
友禅とは
「友禅」とは布に模様を染める技法のひとつで、絹の生地に直接筆で絵を描くように色を付けていく染色技術です。
そのルーツとなった技法は、安土桃山時代から江戸時代初期の「辻が花染」と江戸時代中期の「茶屋染め」と考えられており、元禄時代に京都で生まれました。
江戸元禄時代に扇絵師として人気を博していた宮崎友禅斎が、自分の画風をデザインに取り入れ、模様染めの分野に活かしたことが発端です。
京友禅、加賀友禅、江戸友禅を合わせて日本三大友禅といいます。
京友禅の歴史
三大友禅の中で一番最初に誕生したのが京友禅と言われており、京都で生まれた友禅染めを指します。
それまでの着物は、絞り染めや刺繍、金箔や銀箔が施されたものが主流でした。
しかし、その頃幕府からの奢侈禁止令によって、それまでの着物は技法が派手すぎると禁止されてしまいました。
そこで禁止されている技法ではない、華やかでありながら優美な染め着物「京友禅」が人々の間で広く知られるようになったといいます。
明治時代になると、西洋から入ってきた化学染料と糊を混ぜ合わせ、型紙を使って模様を染める写し友禅染め(型友禅)が考案されます。
これにより、京友禅は大量生産が可能となり、それに伴って染色技法の幅が一層広がっていったのです。
京友禅の特徴
京友禅は日本を代表する染色工芸で、経済産業省指定伝統的工芸品にも指定されています。
有職文様(※)や花鳥風月といった自然のモチーフを染めたものが多く、刺繍や金箔を用いた華麗な絵模様が特色です。
紅や金なども使った華やかな多色使いがよく見られ、三大友禅の中でも特に豪華爛漫です。
京友禅は、模様の中心が濃く、外に向かって淡くぼかしていくという技法が特徴的で、そのグラデーションにより、より優美で華やかな印象になるのです。
※有職文様:平安時代に宮中行事や儀式に詳しい学者などの有識者が着ていた衣服の模様。元は中国から伝来したもので、公家の装束や身の回りの道具、建物の内装などにも用いられてきた。
京友禅の技法
京友禅には、大きく分けて二つの方法があります。
型友禅
型友禅は型紙と色糊を用いて染める技法で、“板染友禅 ”ともいいます。明治時代に入り、合成染料が海外から輸入されたことで考案されました。
柿渋紙という防水性の高い型紙を使用するため、同じ模様の着物が何枚でも染めることができますが、模様の色数だけ型紙が必要です。
1枚の着物を仕上げる為に数百枚の型紙を使う事も多々あります。
手描き友禅
型紙を使わずに筆や刷毛を使い、手で色を挿して染め上げる方法です。
友禅染めの始祖 宮崎友禅斎が始めた技法はこちらの技法です。
製作工程は分業で、20種類以上の専門職人の技術によって1枚の着物が作られていると言われています。
手書き友禅の技法としては、まず、模様をデザインし、下絵を描きます。
その下絵通りに、糸目糊(友禅糊)を使って白い生地に絵画のように模様を描き、模様に色を挿していきます。
糸目糊を使うことで、隣り合う色が混ざらずに日本画にような多彩な染め模様が完成します。この糸目置きをすることにより、何色もの鮮やかな色の使い分けが可能になりました。
色挿しに使用される染料の数は約20色あり、これらを調合することによって何十種類もの色を更に作り出して行くのです。
その染料を使い、最初は白、続いて淡い色からだんだんと濃い色へと色を挿していきます。
これが京友禅の美しさの一つでもあるきれいなグラデーションを作る作業です。
手描き京友禅の制作工程
図案作成
顧客の希望を聞きながら模様の配置や彩色のバランスを考え、図案を起こします。
下絵
図案の上に、反物を裁断し仮縫いしたものを重ねて、つゆ草の汁の“青花(あおばな)で模様を描いていきます。青花とは、水に触れると消える性質を持つ、手描き友禅を作るうえで欠かせない染料です。
糸目糊置(いとめのりおき)
「糸目」とは、柄のふちに見える白い線のことです。青花で描いた下絵の輪郭に沿って、細く糊を置いていきます。この糊が、隣り合う染料との混ざりを防ぎます。
糊の原料にはいくつか種類があり、もち米やぬかを原料とする糊や樹脂糊、最近ではゴム糊などを使うこともあります。
彩色(さいしき)
糸目糊置した模様の内側に色を付ける作業です。
小さな刷毛や筆を用いて、絵画を描くように表現していきます。
柄が多い場合には100色以上の色を使用することもあり、刷毛の扱い方次第でぼかしなども行われます。
糊伏(のりふせ)
地色を染める際、柄の部分に色が入らないように柄の上から糊をかぶせるように置いていきます。
隙間があると染料が入り込んでしまうため、小さな隙間も見落とさず糊を伏せます。
地入(じいれ)
大豆を絞った“豆汁(ごじる)”や、乾燥した“海藻(ふのり)”をお湯に溶かしたものを乾いた生地に大きな刷毛でムラが出ないよう引きます。
染料を染み込みやすくする効果があります。
引染(ひきぞめ)
染料を色合わせした刷毛で、生地全体をムラのないように染めていきます。
濃い色は2~3度重ねて染めていきます。
蒸(むし)
引き染の工程が終わったら、約100度の蒸気で20分~50分間蒸して、色を生地に定着させます。
水元(みずもと)
良質の水で染料や伏糊を洗い流します。
昔は、鴨川や桂川で染めた反物を洗ったため、その風景は京都の風物詩でした。
水元の後で金彩や刺繍をするなどの加工に入ります。
このように、数多くの細かな作業工程を経て京友禅は作られています。
京友禅は現在も振袖や留袖、訪問着などの正装に引き継がれています。
京友禅の名前だけ知っていた、という方もその歴史や特徴を知ることで、より魅力を感じられるのではないでしょうか。