日本の伝統的文化として奥の深い着物の世界。多彩な種類の着物や、着物のアクセントとなる帯、和装小物には様々な種類があります。
そんな中でも、今回は帯のひとつ「兵児帯」について詳しく解説していきましょう。
「兵児帯」は最近女性にも使われるようになり、その身軽さやおしゃれな見た目が特徴です。
本記事では、兵児帯の概要、兵児帯の結び方、結ばなくなった兵児帯のリメイク術などを詳しく解説していきます。
「兵児帯という帯を最近耳にした」「可愛い見た目だから取り入れたい」という方はぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
目次
兵児帯とは?
「兵児帯」と聞くと、まず読み方から難しいですよね。
兵児帯は”へこおび”と読みます。兵児帯の「兵児」は、鹿児島地方で「青年の男性」という意味です。
兵児帯は男性用と子供用の帯として作られました。主に以下2つの種類があり、これらを総称して兵児帯と言われています。
・しごき帯
・三尺帯
しごき帯とは、広幅(約74cm)、並幅(約54cm)の布をしごいて作られたものです。
明治時代に流行しました。
三尺帯とは、その名の通り三尺(約1.14m)の長さの帯です。木綿をしごいて使われます。
主に子供用の帯として使われていますが、本来の用途は職人の手拭い用でした。
兵児帯の特徴として、他帯に比べて生地が柔らかく広い幅であることが挙げられます。
生地には一般的に縮緬や木綿、羽二重などを用いて作られます。
生地の柔らかさと広い帯幅によって、帯を巻いた時の腰の負担を軽減し、手軽に巻ける帯として、普段着の和服によく合わせられます。
一方、式典やお祝いごとの席には向きません。普段着用として作られており、見た目がカジュアルなためです。
兵児帯の歴史は明治時代にまで遡ります。
当時、薩摩藩士が軍装の上からしごき帯を締めて帯刀していたことが由来となっているそうです。
薩摩ではこのしごき帯のことを、15〜25歳の男がしていたことから、兵児帯と呼んでいました。(薩摩で15〜25歳の男=薩摩兵児)
それが兵児帯の由来となっているのですね。
兵児帯が東京にまで広がるようになったのは、1882年(明治15年)のこと。
ちょうど明治維新が起こった頃、薩摩風俗が東京に移入されるにしたがって広く使われるようになりました。
それまで男用の帯は「角帯」が使われていましたが、外出以外のくつろぐ際には兵児帯が使われるようになります。
男用・子供用の帯として使われていた兵児帯でしたが、近年では女性用の兵児帯が登場するなど、使用性の良さだけでなく、ファッション性も取り上げられるようになりました。
兵児帯の選び方
女性用の兵児帯が登場するなどファッション性の良さも認められてきた兵児帯。見た目はフワフワしており、腰への負担も軽くて使いやすいため購入を検討されている方もいるのではないでしょうか。
この項では、兵児帯を購入するときの選び方をご紹介します。
長さや幅の広さで選ぶ
まず、帯の長さや幅の広さで選ぶのがおすすめです。
帯が長ければ、結び方に様々なアレンジを施すことができ、おしゃれコーディネートの幅も広がります。
4mほどの長さがあれば、後ろ姿が可愛らしい太鼓結びなども結べますよ。
幅の広さもある程度広いのを選ぶと、着物がずれにくく、腰への締め付けもそこまで感じません。
生地で選ぶ
おしゃれ着としても着る兵児帯は、生地にもこだわりたいところ。使われている生地によって、見た目が大きく変わります。
生地はなるべく張りのある生地を選ぶと良いでしょう。例えば、ポリエステルや綿を使った生地ですね。
生地に張りがあれば帯を結んだ時にボリュームが出やすく、兵児帯1本で十分おしゃれが楽しめます。着物がたとえ普遍的なものであっても、帯のボリュームがあれば、華やかな装いになるでしょう。
兵児帯のアレンジ、結び方を紹介!
着物の醍醐味といえば、帯の結び方によって印象が大きく変わることです。普段着で使う兵児帯は結び方のアレンジが多様なので、色んな結び方で結んでみましょう。ここでは、後ろ姿が可愛くなる、代表的な3つの結び方を解説します。
可愛らしくリボン結び
仕上がりがリボンのような形で、可愛い後ろ姿を作ります。
- 帯先端から70〜80cmほどを縦半分に折り、左肩にかける
- 残りの幅広い帯を体の中心から腰に二周巻きつけていく
- 二周巻いたら、肩幅分の帯を斜めに内側へ折り上げる
- 左肩に掛けていた帯先端を下ろして、斜めに織り上げた帯と結ぶ
- 結んだら上側の帯を上に上げて、結び目あたりを仮紐で固定する
- 下の帯を折り畳み、輪っかをつくって仮紐に挟む
- 作った輪っかの中に上の帯を折りたたんで通す
- 下の帯を少しひき、余った部分の帯の幅を広げる
- 余った帯を胴に巻いた帯幅分の長さに折り畳み、仮紐に挟んでいく
- 全て挟んだら、折りたたんだ帯を左右に広げ羽根をつくっていく
- 帯を後ろに回したら完成
花結び
まるで花のように美しい後ろ姿が特徴の結び方です。
結び方のアレンジを楽しみたい若い世代におすすめ。
- 帯を縦半分に折る
- 帯の先端から体の中心までの長さは肩に預け、輪になった方を下にして腰に巻きつけていく
- 二周巻いたら、肩にかけていた帯先端を上から下に通して一結びし、上下に引っ張る
- 上側の帯の残りを末端から三等分に折りたたんでいく
- 折りたたんだら、もう一方の帯を畳んだ帯の中心の上から下に通す
- もう一周中心を通す
- 余った帯は胴に巻いた帯の内側に通す
- 帯を左右に引っ張り、形を整えて帯を後ろに回したら完成!
太鼓結び
縁起が良いとされている太鼓結び。ふっくらとした形が特徴です。
- 帯を縦半分に折る
- 帯の先端から体の中心までの長さは肩に預け、輪になった方を下にして腰に巻きつけていく
- 肩にかけた帯と巻いた帯を蝶々結びする。リボン部分は身幅程度に合わせる
- 余った2つの帯の幅を広げ、蝶々結びの結び目に両方を通す
- できた輪っかを太鼓のような形に整える
- 下に出た長い方の帯を少し引っ張り出す
- 帯締めを後ろから前に通し結ぶ
- お太鼓部分の羽根を広げ、後ろに回したら完成!
あんなものにまで!兵児帯のリメイク術
実は使い古した兵児帯は、リメイクすることで洋服を作れるんです!兵児帯のリメイク例を2つご紹介します。
リメイク1:ネックワンピース
ハイネックのワンピース風に兵児帯をリメイクしています。
ちょうど胸あたりの絞りがアクセントとなって、とってもおしゃれな雰囲気に。兵児帯のフワッとした生地によって綺麗な縦線ができ、よりスラっとした印象になります。
リメイク2:ロングワンピース
長さのある兵児帯はロングワンピースにもリメイク可能。3〜4mの長さがあるので、自分の身丈に合わせてカットしましょう。またその際にスリットなどを入れて大人っぽく仕上げるのも美しいです。
絞り部分は胸あたりにすることで女性っぽい雰囲気になりますね。
まとめ
今回は兵児帯について概要や結び方などを詳しく解説しました。
兵児帯は今や女性からも注目を集めるおしゃれ帯のひとつ。これから夏の季節が訪れ、浴衣を着る際にはぜひおしゃれな兵児帯を合わせてみてはいかがでしょうか。