「着物コートの道行と羽織の違いってよくわからないな…」と思っている方はいませんか。
どちらも着物の上に身に着けるコートに分類されます。しかし選び方や着方はよくわかりませんよね。ただでさえ着物は洋服と違い、普段あまり使わないので選ぶ際は困ってしまいます。
そこで今回の記事では、
- 羽織と道行の違いとは?
- 羽織ものの着方と畳み方
- 選ぶときのポイントや使い分け方
の順にご紹介します。
多くの方が抱く着物コートの疑問についてわかりやすく開設した内容になっていますので、お困りの方はぜひご一読ください。
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目次
羽織・道行とは?
まずは着物コートを着る季節について、ざっくり理解しましょう。
羽織ものを着る季節は?
一般的には「紅葉が色づく頃から、桜が散るまで」の間が着物のコートを着る期間と認識されています。秋から春までと覚えておけばいいでしょう。
ただし、シーズンを問わずフォーマルな場で着物を着用するのであれば、コートを持っていく方が無難です。
また、一昔前までは真夏の暑い時季でもコートを着用していました。厚手ではなく薄手のレース素材や、見た目にも涼し気なものが適しています。
特に真夏の暑い時期では、「紗」や「絽」と言った夏専用の織物製品を着ましょう。「紗」とは、透明感の強い薄い素材です。一方で、「絽」とは紗よりも透けている部分が少ない夏用生地の最もスタンダードな織物と分類されます。
どちらも通気性に優れていますが、格式を求められる場では透け感の少ない絽が適しています。
羽織とは?
羽織は着物の上着として、最も幅広く使われています。本来は男性用でしたが、江戸時代に芸者が着用し始めて、女性の間に一気に広まったと言われています。
例えば、昭和50年代まで既婚女性に支持された「紋付き羽織」があります。
背中部分にワンポイントの紋が1つあしらわれています。どんな格好でも紋付きであれば、ある程度それらしい見た目になるため、家事に忙しい主婦に重宝されていた背景があります。
時代が変わるとともに羽織に関しても、丈の長さも徐々に変化しています。現在のトレンドではロング丈が主流です。
洋服で言うと、カーディガンやジャケットに分類されますので室内で着用していても問題ありません。前面に「羽織紐」と呼ばれる紐が付いています。裏地にあたる「羽裏」の部分で、様々な模様をあしらってオシャレを楽しめます。
着用する主な目的は、
- 防寒のため
- 着物の汚れを防ぐため
- オシャレのため
などです。
そのため、現代においてはあくまでも普段使いがメインです。女性の正装ではありませんが、紋付き羽織であれば略礼装になります。
黒色の紋付きは略礼装の中でも最も格式が高いので、昔は入学式や卒業式によく母親が来ている光景が見られました。
道行とは?
道行とは外出用のコートという意味で、礼装の場合に着られる上着です。
衿の形が額縁のように角張っているのが道行衿と定義されています。その形状から「角衿」と呼ばれる場合もあります。
この四角い衿が1番の特徴です。
礼装用なので留袖や訪問着などのフォーマルな着物に合わせて着用します。しかし、紬のような素材で作られていると、カジュアル使用になります。
サイズは五分丈、七分丈が一般的です。
羽織ものの着方
羽織と道行の違いに続いて、着方をご紹介します。
羽織の着方や脱ぎ方
着方に関しては衿の扱いが、多くの人を悩ませるポイントです。うまく着こなせば、上品な雰囲気が一気にでるので、マスターしましょう。
羽織を着る際、衿は肩から後ろの部分を、「外側」に半分折って着用します。
着物の衿のカーブに合わせて、添うようなイメージです。
うまく折られていないと、着物が衿に隠れてしまい背後から見た時に不格好になるので注意してくださいね。
肩口から下は、自然に外側に折り曲げます。
脱ぐ際は、両方の袖を一緒に引きます。この時、両手を背中の方に持って行き肩からスルスルと落とすように下に引きましょう。肘まで落としたら、片方ずつ脱ぎます。
脱ぐときは、後ろ向きで行うと気品を損なわずに済みます。特に訪問先では注意したいですね。
基本的に、お茶席以外であれば室内でも特に脱ぐ必要はありません。ただし、そのまま座るときは裾を踏んでしまわないように気を付けましょう。シワになるのを防げますし、座っている姿をキレイに見せられます。
道中着の着方や脱ぎ方
「道中着」とは衿が裾の長さまであるコートです。カジュアルな装いですが、着脱がとても楽なので近年急激に人気を集めています。また、ひもで身幅を調節できるので、体型の変化にも柔軟に対応できます。
道中着は衿の肩から後ろの部分を、「内側」に半分折って着用します。
肩から前方は折り曲げずに、自然と開くようにします。
道行も道中着も、室内では脱ぐのがマナーです。
脱ぐ際は、紐を先にほどく以外は羽織とほぼ同じです。両袖を引っ張って肩からはずし、肘まで落としたら、両手を後ろに回してそろえて脱ぎます。
羽織ものの畳み方
脱いだ後は、キレイに畳んで保管しましょう。
次に着るまでに長い期間が空く際は、
- 湿気の除去および汚れのチェックをする
- 汚れがある場合はできるだけ早くクリーニングに出す
汚れを確認して、キレイな状態で畳むようにしましょう。汚れを発見しても安易に自身でシミ抜きなどを行わないのが肝心です。なぜならシミがさらに広範囲に広がってしまう恐れがあるためです。
畳み方の工程は、1度覚えてしまえばほとんどの着物に応用できます。
羽織の畳み方
まずは、羽織紐を外してください。もしも生地に直接付いているタイプの場合は、紐をまっすぐ伸ばして畳むようにします。
衿を左にして平らに広げ、後ろ衿は内側に折ります。
脇にあるマチは半分に折って整えておきます。
次に、左前身ごろの衿を持ち、手前の右前身ごろの衿の上にぴったりと重ねます。
衿肩明きもキレイに整えておくのがポイントです。
左前身ごろの「マチ」を持って、右前身ごろの「マチ」の線に重ねます。
背縫いからふたつ折りし、手前に重ねるようにしましょう。
上に重なっている左側の袖を、袖付けから向こう側に折り返し、身頃の上にキレイに重ね合わせます。
下にある右袖を、左袖と同じように身ごろの下に折り返します。
シワができないように気を付けてください。
難しい場合は、全体をひっくり返してから袖を折り返しても大丈夫です。
最後に、袖の付け根を右から左に折り返し、重ねたら終了です。
内側にシワができないように気を付けてください。
道行の畳み方
まず左に肩山、右に裾、背縫いが見えるように平らに広げます。
先に右の身ごろを脇線で折り、続いて左の身ごろも脇線で折って、左右の身ごろに重ねます。
右の脇線と袖付線を身ごろの中央まで持っていき、袖だけを手前に折り返してください。
左側も同じように身ごろと袖を折ります。左右の脇縫いが中心付近で揃うようにするのがポイントです。
最後に袖が折れないように裾側から、丈を二つ折りにして完成です。
羽織ものを選ぶときのポイントや使い分け方
続いては選ぶ際のポイントや、使い分けをご紹介します。
気分次第で選んでも大丈夫
基本的には選び方や使い分けにこれといったルールは決められていません。シーズンや気分で使い分けても良いでしょう。
例えば、印象の強い華やかな柄の着物の場合、落ち着いた色のシックな羽織がおすすめです。特に黒羽織は柄の着物と合わせた時に、全体の印象を引き締める効果があります。コントラストがはっきりするので、着物の柄を引き立ててくれます。
おしゃれ上級者なら、「柄オン柄」に挑戦するのも良いでしょう。ダークカラーがベースのデザインを選ぶと比較的合わせやすいですよ。
なんと言ってもコーディネートのポイントは、色選びです。フォーマルでもカジュアルでも、着物の色から1色取り入れて選ぶとバランスが良くなります。これは洋服でも同じですよね。
同系色を使い、色の濃淡で個性を出せば一気に着こなし感が出ます。羽織紐などの小物アイテムを組み合わせるときも、この色使いルールは当てはまるので、ぜひ参考にしてみてください。
特に羽織はオシャレ着に分類されるので、ショールやストールなどの小物で個性を表現するのもおすすめです。
また、最近はリメイク品も豊富なラインナップで人気を集めています。なぜなら着物は世代を超えて受け継がれるほど高品質だからです。
コーディネートに困った際は、色や柄の流行を考慮して現代風に生まれ変わったリメイク品にも挑戦してみてください。
礼装か、礼装でないかは気をつけよう
使い分けの際に注意したいのは、TPOに合わせた「格」がある点です。羽織はオシャレ着とご説明しました。
つまり礼装にはなりません。結婚式などのかしこまった式典に着ていく際は適していません。
フォーマルな礼装、正装の時には道行コートを着るようにします。柄が入っていない無地のコートを選べば問題ありません。1つ持っていると、正装としても普段着としても使えるので大変便利です。
まとめ
今回は羽織ものについて詳しくご紹介しました。
おさらいしておくと、
- 羽織と道行には衿の形に違いがある
- 羽織は基本的に普段使い用で、洋服で言うとカーディガンである
- 道行は結婚式などの礼装時も着用可能
- どちらも基本的には気分次第で使いまわすと良い
- 道行ならカジュアル、フォーマルの両シーンで使用可能なので1つ持っておくと大変便利
羽織ものには様々な種類があり、TPOによって向き不向きがあります。それぞれが持つ利点を知って、和装のオシャレを楽しんでくださいね。リメイク品を見てみるの選択肢のひとつとしておすすめですよ。