お祝い事や人生の節目で着る着物。一年の中で着る回数が少ない装いですが、みなさんは着物を着た後にきちんとお手入れを行っていますか?
着物をきれいな状態で持ち続けるために定期的に洗濯することはとても大切ですが、洗い方や干し方を知らないままだと、洗濯するのも不安になりますよね。
今回は、着物を自宅で洗濯する方法や洗える着物の生地の解説にくわえ、自宅で簡単に洗濯できる着物を紹介します。
目次
着物を洗濯する方法をチェックしよう
着物を洗濯するときは自宅で洗濯をするか、クリーニング店に持ち込むかを比較して検討をする方が多いかと思います。まずは、着物を自宅で洗濯する場合と、クリーニング店に持ち込んだときの違いをチェックしましょう!
▼自宅で着物を洗濯する
自宅で着物を洗濯すると、クリーニング店を行き来する手間を省き、クリーニング代を節約することができます。ですが、自宅で着物を洗える生地かチェックすることが大切です。
・洗濯をする際は取り扱い絵表示をチェックしておこう!
洋服と同様、着物を洗濯するときも手洗いができるかどうか、ドライクリーニングが可能かどうかは、取り扱い絵表示でチェックすると把握できます。手洗いマークを記載している着物は、自宅で洗濯できますよ!
・着物の生地が洗濯可能かチェックしこう
最近では、自宅で洗濯できる着物も増えてきていますが、取り扱い絵表示がない着物を洗濯するかどうかを判断するのは、難しいですよね。着物の生地は化学繊維であれば洗濯できます。
ですが、心配な方は捨てても問題ない着物で練習をしたり、目立たないところを部分洗いしたりしてチェックしてから洗濯しましょう。
・縮んでしまうと元に戻せないので慎重に
服を洗ったときに生地が縮んで着られなくなった経験はありませんか?着物も洋服と同様、洗濯すると縮んでしまう生地もあります。縮んでしまった着物は元には戻せないので、自宅で洗濯をするときは慎重に判断してください。
▼クリーニング店で着物の洗濯を依頼する
自宅で着物を洗濯するのが不安な方は着物をクリーニング店に持ち込んで洗濯を依頼しましょう。また、家族で代々受け継いでいる着物や、帯などもクリーニング店に持ち込んで洗濯をするのがおすすめです。
着物を自宅で洗濯する前にチェックするべきことは?
急に着物を着る用事ができて自宅で着物を洗わなければならないときは、どの箇所が汚れているか、また、洗える素材かどうかをチェックしておくと安心して洗うことできますよ。ここからは着物の汚れやすい部位や、洗える素材について説明します。
▼汚れやすい部位をチェックする
外観が美しく豪華な着物は汚れが目立ちにくいのが魅力ですが、実は裏地や襟部分には皮脂や化粧汚れ、汗染みなどがついていることがあります。
以下の箇所は着物の中でも汚れやすい箇所になります。汚れが気になる箇所が多い場合は洗濯をするようにしましょう。
・裾
着物の裾は地面に近いため、砂埃や泥汚れが付きやすい箇所になります。
・掛衿(かけえり)
首の後から首元にかけて触れる掛衿は、着物の中で最も汚れやすい部位です。化粧汚れや皮脂、汗などが染み付いていないかチェックするようにしましょう!
・袖口(そでぐち)
袖口は掛衿と同様、皮脂や汗がつきやすい箇所になります。袖口の汚れはちょっとした動作で見えてしまうこともあります。外側と内側、両方をチェックするようにしましょう。
・前身頃(まえみごろ)
着物の前半身が触れる前身頃は、食べこぼしや飲み物のシミが付いている可能性があります。
・裏地
裏地は背中などの汗を吸収して、汗染みがでていることがあります。夏や暖房のきいた部屋で着たあとは汚れていないか念入りにチェックするのがおすすめです。
自宅で洗濯できる生地かどうかチェックする
着物の生地は、さまざまな種類があります。ここからは自宅で洗濯できる生地と洗えない生地について紹介します。
まず、以下の生地でできた着物は、自宅で洗濯をすることができます。
- 木綿
- 麻
- ポリエステル(化繊)
- ウール
木綿生地や麻の着物は自宅で簡単に洗濯することができます。通気性の良さが魅力ですが、汗染みなどが気になる方は自宅で洗濯してみましょう!
化学繊維でできたポリエステルの着物や厚手なウールの着物も、自宅で洗濯をすることができます。特に、ポリエステルは天然素材よりも生地が丈夫なため、着物の取り扱いに慣れていない初心者さんにもおすすめです。
絹の着物は柔らかくて高級感がありますが、自宅で洗濯をすることができません。絹は水につけるだけで色落ちや変色、縮みが起きてしまいます。クリーニング店に持ち込んで洗濯をするようにしましょう。
▼着物を洗濯する際に用意するものは?
着物を洗濯は難しそうと感じる方も多いと思いますが、自宅にある洗剤や桶などを使えば簡単にできますよ!それでは、着物を洗濯するときに使うものを紹介します。
・中性洗剤(おしゃれ着洗剤)
着物は通常の洗濯用洗剤ではなく、おしゃれ着洗いで使用する洗剤を使用して洗います。
・洗濯桶
着物を洗濯するときは手洗いで洗濯をするのがおすすめです。着物は浸け置き洗いやすすぎ洗いを行うので、洗濯桶は必ず用意してください。桶に着物が入るか洗う前に確認しておくと安心ですよ!
・つっぱり棒
タオルやシーツなどは物干し竿にかけて干しますが、着物の袖に物干し竿を通そうとすると、物干し竿を上げ下げしたときに、着物の裾が地面について汚れてしまうことも。また、重い物干し竿を上げ下げするのは大変ですよね。
つっぱり棒を用意しておくと、着物の袖を通してから干すのも簡単にできますよ!
・S字フックと洗濯バサミを2つずつ
S字フックと洗濯バサミは、つっぱり棒を引っ掛けるために使用します。物干し竿にS字フックをかけて、洗濯バサミでS字フックを固定します。
固定したフックにつっぱり棒を置いて、着物を干してくださいね。
・洗濯機を使う場合は洗濯ネットを忘れずに!
着物は洗濯機で洗うよりも、手洗いで洗濯をする方が生地へのダメージが少なくなります。ですが、時間がないときや洗濯桶がなくて、洗濯機で洗わなければいけないときもありますよね。
どうしても洗濯機を使用する場合は、かならず洗濯ネットに着物を入れてから洗濯をしてください。また、ネットに入れるときは着物をきれいにたたむようにしましょう!
自宅でできる!着物の洗濯の仕方は?
衣服を手洗いで洗ったことがない方や、着物を洗濯したことがなくて着物の洗い方が分からない方も多いかと思います。
ここからは、着物を手洗いで洗濯をする手順と、洗濯機で洗濯をする方法を紹介します。
▼着物を手洗いで洗濯する手順を紹介
着物を手洗いで洗濯するときは、以下の手順で行います。中性洗剤や洗濯桶を用意して順を追ってやってみてくださいね!
- 洗濯桶に水をためて、中性洗剤を溶かします。水の量は着物がつかるくらいの量を入れるようにしてください。
- たたんだ着物を入れてやさしく押し洗いをします。汚れが気になる箇所は、洗剤をつけて、やさしく部分洗いを行いましょう。
- 汚れた水を捨てて、着物を2〜3回すすぎ洗いします。着物を持ち上げるときは、繊維がほつれないようにやさしく持ち上げてください。柔軟剤を使用する場合は、すすぎ洗いの最後に使用します。
- 着物の水気をきったら、タオルで水気を拭き取ります。
- つっぱり棒に着物の袖を通したら、着物を陰干ししてください。
着物が乾いたら、きれいにたたんで保管しましょう。着物は「袖だたみ」というたたみ方を行って保管します。
着物を床に置いたら、右の前身頃を縫い合わせ部分で折り返します。つぎに、左の前身頃の衿を、右の前身頃の縫い合わせ部分にかぶせてください。そして、左の見頃を右の身頃に重なるように折り、右側の身頃も同じように折ります。
最後に、両袖を折りたたんで身頃の上に乗せてじゃばら状に折りたたみましょう。
▼着物を洗濯機で洗濯をする手順を紹介
着物を手洗いする時間がないときや、洗濯桶がない場合は洗濯機で着物を洗いましょう。
以下の手順にそって、着物を洗濯機で洗ってください。
- 着物をたたんで、洗濯ネットに入れます。
- 着物とおしゃれ着用の洗剤を洗濯機に入れて「手洗いモード」で洗濯をしてください。このとき、脱水は通常の半分の時間で行うようにしましょう。
- 洗濯を終えたらつっぱり棒に着物の袖を通して、着物を陰干ししてください。
▼長襦袢や足袋を洗濯する場合は?
着物の内側に着る長襦袢や足袋も、自宅で洗濯をして清潔にしておきたいですよね! 長襦袢や足袋は、汚れが目立つところに事前に洗剤をつけて、洗濯機で洗うだけです。
洗剤は、通常の洗濯洗剤を使うことができますが、装飾があるものはおしゃれ着洗い用の洗剤を使用しましょう。また、絹素材の長襦袢や足袋は自宅で洗濯をすると変色や縮みの原因になることも。時間に余裕を持ってクリーニングに出すことをおすすめします。
▼帯は自宅で洗濯できる?
帯が汚れてしまうと、使うのに躊躇してしまいますよね。ですが、帯は刺繍などの装飾が多いため自宅で洗濯をすることができません。着物の帯は洗わずに、室内干しをしてからきれいにたたんで保管してください。
着物にアイロンをかけるときの注意点は?
着物を洗濯して干したあとにしっかりとシワを伸ばしたいとき、着物にアイロンをかけることができたらより気持ちよく着物を着ることができますよね。着物にアイロンをかけるのは、実は簡単です♪
あて布と霧吹きを用意したら、着物の表側にあて布を置きます。その後、アイロンを中〜高温になるように温めて、あて布の上からやさしくアイロンをかけるだけです。シワが強く残っているところにはあて布の上から霧吹きをかけておきましょう。
ですが、着物に刺しゅうや金箔の装飾をほどこしている箇所は、アイロンをあてないように注意してください。
自宅で洗濯できる生地の着物を紹介
ここまでで、着物を自宅で洗濯するときの注意点や洗える生地のほか、着物を洗う手順も紹介しました。ここからは、自宅で洗濯できる生地でできた着物を紹介します。
▼ポリエステル(化繊)の着物
気軽に洗濯できるポリエステルの着物は、素朴なデザインの単衣着物などがあります。暑い季節に着る単衣着物も、ポリエステルのものを選ぶことで安心して洗濯することができますよ!
▼麻の着物
夏の洋服でも取り入れることが多い麻の生地でできた着物は、浴衣で出かけると軽装になってしまうときや、街歩きや観劇をするときにおすすめです。明るい色のものを選ぶと華やかに、暗い色のものを選ぶと、凛とした着こなしを楽しめますよ!
▼木綿の着物
丈夫さが魅力の木綿の着物は、普段着用におすすめです。反物という仕立て用の布を買っておくと、足し布などに使うこともできますよ!
出先で染みができたときの応急処置は?
外出中に食べ物の染みなどができてしまうと、きれいな着物を着ていても気持ちが落ち込んでしまいますよね。そんなときのために、出先でできる簡単な染み抜きのやり方を紹介します♪
染み抜きで使うものはハンカチとアルコール、食器洗い洗剤、ガーゼだけです。染みの下にハンカチを置いて、ルコールや食器洗い洗剤を含ませて、ガーゼでたたくだけで染み抜きを行うことができます。
インクや化粧の染みにはアルコールを、調味料や飲み物の染みには中性洗剤を使用して落としましょう。チョコレートやマヨネーズ、バターなどの染みは、アルコールで染み抜きをした後に、中性洗剤で染み抜きを行ってくださいね!
食事会やお子さんの七五三で着物を汚してしまいそうなときに、ぜひ活用してみてください。
▼染み抜きの際に気をつけたい注意点は?
外出中に染み抜きを行うときは、染みをおしぼりでふいたりこすったりしないでください。
レストランなどのおしぼりはアルコールを含んでいるため、着物が変色してしまうことがあります。また、染みをこすると着物の生地に染みが沈着する原因になることも。染みができても慌てずに、前述で解説した手順で染み抜きを行ってくださいね!
【番外編】着物をクリーニングした際にかかる料金は?
絹の着物をきれいにしたい方や、時間に余裕があってクリーニングに出したいというとき、着物のクリーニングにいくらくらいかかるか知っておくと安心ですよね。
着物は、およそ以下の予算でクリーニング店に洗濯を依頼することができます。
- 着物一式:6,800円程度
- 振袖:9,000円程度
- 長襦袢や帯:3,800円程度
- 染み抜き:ワンポイントの場合は2,800円程度、大きなシミの場合は7,000〜10,000円程度
店舗によって、上記の金額を上下する場合があります。相場を知りたい方は参考にしてくださいね!
着物を正しく洗濯していつでもきれいに着こなそう
今回は、いつまでも清潔な着物を着たい方や、着物の手入れを自分で行いたい方のために、着物を自分で洗濯するときの注意点や生地の解説にくわえ、自宅で気軽に洗える着物などをとことん紹介しました。
大事なときに着る着物だからこそ、清潔に保ち、大事に使っていきたいと思う方も多いと思います。今回の記事を参考にして、着物の手入れの幅を広げてくださいね♪
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