着物は古くからの歴史があり、大切に守り伝え続けてきた日本の文化です。とはいえ、着物を着る機会は昔と比べると格段に減っており、日本人でも着物に関する知識はほぼないという人が多いものです。
着物を着用するときに必須となる帯も全部同じというわけではありません。長い歴史の中で人々が使いやすいように改良した結果うまれた「袋帯」という種類や「名古屋帯」という種類の帯があります。名古屋帯の方が歴史は浅く、袋帯よりも着付けやすいように作られました。
では具体的に、名古屋帯は袋帯とはどこが違うのか、名古屋帯にはどのような種類があるのか知りたいという方は多いのではないでしょうか。そこで今回は2つの帯の違いや種類、さらに名古屋帯と着物や浴衣との合わせ方まで詳しくご紹介いたします。
目次
着物の帯の定番、名古屋帯とは
古くから礼装に使われてきた高価で着付けが大変な丸帯を改良して、まず、明治時代に袋帯という帯が作られました。そしてさらに、二重太鼓にしなければならず着付けが大変だった袋帯を改良して、一重太鼓で簡単に着付けができるようにと作られたのが名古屋帯です。
この名古屋帯は大正時代に女学校の先生によって考案され、昭和にかけて開発され全国に広まりました。柄の付き方によって変わる呼び方や、どんな場面で使われる帯かを簡単に紹介します。
柄の付け方によって呼び分ける名古屋帯の名称
名古屋帯は、帯に対する柄の付け方によって呼び方が3つに分かれます。帯全体に柄があしらわれているものを全通柄といい、帯の60%ほどに柄があるものを六通柄、しめたときに背中に来る四角になるところにのみ柄があるものをお太鼓柄と呼んでいます。背中に来る四角の部分をお太鼓と言います。
名古屋帯はフォーマルとカジュアルどっちか?
名古屋帯は袋帯を簡略化して着付けをしやすいようにできたものなので、カジュアル向けと言えます。小紋や紬などの普段着と呼ばれる着物を着用する時に最適な帯です。きちんとかしこまった場面ではやはり袋帯が一般的です。
着物の帯の代表格、名古屋帯と袋帯の違い
袋帯を簡略化して作られたものが名古屋帯という紹介をしてきましたが、では具体的にはどこがどのように違うのか、ここから詳しくご紹介いたします。
動画で知りたい方は、下にある“すなお”さんの動画をご覧ください!
名古屋帯と袋帯は形状が違う
名古屋帯と袋帯は仕立てた時の形状が異なります。袋帯は表の生地と裏側の生地を縫いつけて、袋状にしています。
一方、名古屋帯にはいろいろな仕立て方がありますが、一般的な名古屋仕立ては、お太鼓以外を手先にかけて半分の幅に仕上げます。
松葉仕立てという仕上げかたも形状は名古屋仕立てと似ていて、手先だけを半分に折って仕上げるので袋帯とは違う形状をしています。おそめ仕立てという方法だけ袋帯と同じ形状をしており、お太鼓と同じ幅で手先までを仕上げています。
名古屋帯と袋帯は長さが違う
名古屋帯は袋帯より短い作りになっています。その差は60〜70センチほど。袋帯は4.3メートル前後の長さがありますが、名古屋帯の長さは3.6メートル前後。名古屋帯は長さが短いのでその分締めやすく、軽いという特徴があります。
名古屋帯と袋帯は結び方が違う
名古屋帯と袋帯は長さが違いますので、締め方も同じではありません。長い袋帯は、帯を締めた時にお太鼓を二重にする二重太鼓が可能なのですが、名古屋帯は長さが短いため二重太鼓にすることができないのです。お太鼓が重なっていないこの締め方は一重太鼓といいます。
名古屋帯と袋帯の値段の違いは?
それぞれ1〜2万円程度で手に入れられるものから、数十万円するようなものまであります。仕立てを頼むかどうかや、使われている生地によって価格に大きな差が出ますので、どちらが高いとは一概には言えません。
名古屋帯と袋帯はどっちが格が上?
名古屋帯、袋帯に加えて半幅帯という幅が始めから半分である帯も比較対象に入れて紹介します。
袋帯(フォーマル)>名古屋帯(セミフォーマル〜カジュアル)>半幅帯(カジュアル)
袋帯が生まれる前からあった丸帯も入れると袋帯よりも格は上になりますが、ざっくり分けて格付けするとこのようになります。
名古屋帯の種類
実は名古屋帯には2種類あります。
仕立てる方法と、仕立てる前の生地の幅で種類が異なる2種類ですが誤った認識をされやすいので今回詳しくご紹介します。
九寸名古屋帯と八寸名古屋帯
名古屋帯は「九寸名古屋帯」と「八寸名古屋帯」の2種類があります。
仕立てる前の生地の幅は九寸名古屋帯は約35センチ。八寸名古屋帯はだいたい30センチほどです。
そして、仕立てる際、九寸名古屋帯は端っこを折り曲げて幅を調整して形にしていくのに対し、八寸名古屋帯はそのままの状態で形をつくっていきます。
さらに、生地の厚みにも違いがあるので実際に仕立てていく過程にも違いがあります。九寸名古屋帯は生地が薄いので帯芯を入れるのですが、八寸名古屋帯はもともと生地が厚いため帯芯は入れずに進めていくのです。
九寸名古屋帯はお太鼓以外の幅を半分にする「名古屋仕立て」が、八寸名古屋帯は手先の幅だけ半分にする「松葉仕立て」が定番なので、松葉仕立てだから八寸名古屋帯だ!という勘違いもあるようです。
実際はそれぞれどんな仕立て方でもいいので、自分にあった仕立て方を選択してください。
名古屋帯はどんな着物に合うの?
食事会やお出かけなどの場では、紬や小紋、御召と呼ばれる着物によくあいます。このようなカジュアルなシーンであれば、華やかな色のものや個性的な柄のものなどで、着物と帯の合わせかたを自由に楽しめます。
着物別の名古屋帯の合わせ方
着物別にいろんな種類の名古屋帯との相性のいい合わせかたを紹介します。
織りの着物やカジュアルな小紋の着物には、かがり名古屋帯という簡単な仕立てでできた紬織りや博多織、西陣織などの帯がカジュアルで相性がいいです。
織り名古屋帯には錦織りや金箔織りで、しっかりした生地の中に金箔、銀箔が入っていて格が高くなっているものもあります。織り名古屋帯は小紋や色無地、軽めの付け下げを合わせて、少しかしこまった席にも着用することができます。
染め名古屋帯には、代表的なつるっとした質感が特徴の塩瀬の手書き染めと、シワ感が独特の質感を出す縮緬の紅型染めなどがあるお洒落な帯で、織りの着物やカジュアルな小紋の着物と合わせると上品な洒落感が出て相性抜群です。
おしゃれな小紋や紬の着物と合わせる場合は、個性的な絞り染め帯を合わせるとさらにおしゃれに個性を出すことができるのでおすすめです。
名古屋帯は結婚式に向いてるの?
袋帯と名古屋帯、結婚式に適しているのは袋帯です。長さが短い名古屋帯は二重太鼓にできません。結婚式など喜ばしい出来事があった際は、その喜びが何度も重なるようにという意味を込めて、二重太鼓ができる袋帯が縁起がいいので好ましいとされています。
名古屋帯は礼装にも向かないの?
名古屋帯は袋帯よりも簡単に締められるものとして、簡略化してつくられたものですので礼装には向いていません。
礼装には二重太鼓の帯を用いるのが一般的です。礼装用とされる名古屋帯や、金糸や銀糸が使われている名古屋帯がありますが、そういったものも長さが足りず二重太鼓にはできませんので礼装には向かないでしょう。
袋帯と名古屋帯で比べると袋帯の格が上なので、礼装には袋帯を用いるのが失礼もなく無難と言えます。
名古屋帯は浴衣には合うの?
浴衣に名古屋帯を締めるとちょっとしたきちんと感がプラスされるので、大人っぽい装いになります。
その際はかわいらしい浴衣ではなくて、落ち着いた色合いの浴衣を選び、生地もできれば綿紅梅、綿紬と言われる上質なものにすると、シンプルな色合いのものが多い名古屋帯との相性も抜群です。
さらに、ホテルのランチやディナーなどの多少改まった場所では足袋や長襦袢などを合わせるとバランスよく着用できるでしょう。
浴衣にはどんな種類の帯を合わせたらいいの?
浴衣には軽くて結びやすい浴衣帯がスタンダードです。
日常の着物にも使える半幅帯は、たくさんの模様があり浴衣に合うものを選びやすいかと思います。
兵児帯と呼ばれる帯も種類が増えており、ふわふわした軽い素材で結びやすいので人気が出ています。
名古屋帯の特徴まとめ
名古屋帯や現在、着物の帯の定番として広く親しまれています。フォーマルな場面で締める袋帯に比べると、カジュアルな場面で使われるのが名古屋帯です。半幅帯よりは格が高く、最も普段着として合わせやすいのが特徴です。
名古屋帯は二重太鼓にできない帯なので、結婚式などのおめでたい場での礼装には相応しくありませんが、浴衣に合わせると落ち着いた雰囲気になるので幅広い年代の方に取り入れてもらいやすいのではないでしょうか。
普段着と呼ばれる小紋や紬には気軽に合わせられるのはもちろん、金糸や銀糸が使われた名古屋帯であれば略礼装に取り入れられますし、セミフォーマルからカジュアルまで幅広く、シーンに合わせた着用できるなど名古屋帯には多くの魅力が詰まっています。
名古屋帯で簡単にお太鼓結びを動画で解説!
京都で着物着付け教室を運営されている“すなお”さんの動画をご紹介します。
非常に簡単にできるので、是非視聴してくださいね!